北原茂実理事長に、今回のコロナ騒動で明らかになった日本の医療の問題点と、それを解決するために理事長が提案、実行している取り組みについて聞いた。
日本の医療の問題点
制度として成り立たない国民皆保険
「日本型皆保険は、戦後の混乱期を乗り越えるために緊急避難的に導入された途上国型の制度であって、保険でも社会保障でもないことを理解する必要があります。所得に応じて掛け金が決まること、積み立て方式ではなくて賦課方式であることは、この制度が理論的には保険ではなくて目的税であることを意味しています。
結果、保険料が払えなければ保険資格を取り消されるので弱者の救済には役立ちません。またフリーアクセスと皆保険の両立を謳っているため、全ての医療施設が質的に同じであることを前提としなければならず、医療の質に関する公表及び議論ができないという致命的な欠陥もあります。
そして、この”世界に冠たる皆保険”が成立するには、1. 人口構成がピラミッド型であること、2. 経済が常に右肩上がりであること、3. 病気になる国民が少ないこと、が必須であり、そもそも今の日本でこんな制度が存続できるわけがありません」(北原)
財源や人材の不足、誤った政策、医療レベルの低下も
「国民皆保険という、医療を産業ではなくて施しとみなす制度のため、外貨を稼ぐ自動車産業が基幹産業とみなされているのに対し、800万人が従事する本来日本最大の産業であるはずの医療は経済の足を引っ張るお荷物扱いされています。
結果、財源不足からハードワークに見合った給料が支払われないので離職者が後を絶ちません。政府はインバウンドのメディカルツーリズムによる外貨の獲得、安価な労働力としてのEPA看護師受入などを提言していますが、いずれも自国の制度の歪みを他国民の犠牲の上に解決しようとする誤った政策と言わざるを得ません。
今回のコロナ対策で図らずも明らかになったように既に日本の医療は様々な面で遅れをとっています。こうした問題をきちんと整理して初めて、全ての国民が楽しく幸せな人生を全うするために、医療はどうあるべきかの議論が可能になるはずです」(北原)
新型コロナパンデミックはなぜ起こったのか?
1910年代のスペイン風邪の大流行の後、特に先進国では感染症は減り続け、1967年米国の公衆衛生総監が「人類が感染症に脅かされる時代は過ぎ去った旨の議会証言を行うに至った。ところが、20世紀も終わりに差し掛かった頃、小規模なパンデミックが再び世界各地で起こり始め、1992年、NIH(米国国立衛生研究所)は「再び人類が大規模なパンデミックを恐れなければならない時が来た」という警告を発する。