山田:そこで2週間、どう過ごされたんですか?
朽木:マイナス20度、30度の南極大陸にいながら、ロッジは太陽光の暖房で暖かく、フルコースのフレンチにワインもいただけるのが魅力のプログラム。その辺の氷河を割ってきた氷でウィスキーをロックにする。「6000万年前の氷」って言われて、それを今グラスで飲んでいると思うと、6000万年ってどういう時間だ? と思いを馳せる。時空を超えた体験です。世界のトラベラーってこういうことを楽しんでいたんだな、日本人ももっと頑張らなきゃなと思いましたね。
南極点に到達
山田:旅の前後でご自身の意識は変わりましたか?
朽木:それはもう。アイスクライミングとか、なかなか体験できないようなアクティビティがいくつもあるんです。猛吹雪の中をロープで繋がれて氷の上をガイドさんとただひたすら一日歩くとか。一人だったら間違いなく遭難ですが、世界トップクラスの冒険家が導いてくれるので、踏み外して穴に落ちるなんてことが絶対にないように安全性も担保されている。快適ながら刺激を満たしてくれるのがすばらしかったです。
南極大陸を飛び回った思い出の翼ベイズラー BT-67
山田:南極は私も行ってみたい。次は宇宙ですか?
朽木:興味はありますね。宇宙から地球を眺めてみたいなっていうのはあるけど、そのうち、ですかね。
山田:日本がベンチマークすべき国はありますか?
朽木:わかりやすい観光先進国ではフランスやイタリア。今や国家間の観光分野の競争は熾烈で、モルジブやマレーシア、スリランカなど、他の産業で日本が競ってこなかった国がライバルです。そういう国々と戦う気概が果たして日本にあるのか?
今回のコロナでも、日本は国境を開けるのが遅い。世界ではコロナはもう終わったものとして開けていますが、日本は貿易、輸出が主要産業としてあるので観光は二の次。それが日本の強みでもありますが、こと観光においては弱みになっています。マレーシアなどは、GDPの10%が観光業。そこと本気で戦うくらいの気概がないと、いつまでも世界の一流の観光立国にはなれないでしょう。
山田:気概と覚悟が必要ですね。
朽木:これまでは日本人のキャラクターや自然や文化、食文化、精神性など、先人の遺したリソースが外国人に受けてきましたが、ここから十年先を見据えて戦うなら、一つの産業として捉えて覚悟を持って挑まなくてはいけませんね。