旅が生活の一部。ハイエンドトラベラーは「旅」に何を求めるのか?

マゼランリゾーツの代表 朽木浩志(左)、Urban Cabin Institute パートナー山田理絵


朽木:日本人って、金融資産がいくらとか、定義づけから入りますが、それを知ったところで彼らに対応できません。正直なところ、富裕層のライフスタイルや旅のスタイルは分からない部分も多いです。でも、分からないなりに「こうかな?」と想像するものが大きく違っていなかったから、続けてこられているのかと思っています。

山田
:富裕層も自分の生活を知られることを嫌がりますものね。直接接する中で何か感じられたエピソードは?

朽木:プライベートジェットでいらして、都内のスイートルームを貸し切って家族と過ごしていたお客様の話です。食事はさぞかし大変な所でされるのだろう、毎回アレンジが大変そうだな……と思っていたら、なんと毎日マクドナルドのハンバーガーだったんですよ。



山田:わざわざ日本に来てまで?

朽木:想像つかないですよね。その方は、食に興味もこだわりもなかったんです。こちらが勝手に「食事は三つ星でしょ」と思い込んでいただけで。富裕層の方は、こんな風に興味がある部分とない部分、お金を使う部分と使わない部分が結構はっきりしていますね。

山田:そうすると彼らと対峙するときは、先入観を持たず、全てを受け入れるような感覚でいれば良いのでしょうか?

朽木:そう思います。気構えず、フレキシブルに、「どう出られても対応しよう」とリラックスしている方がいいのかな、と。なかなか難しいですけど。あまり決めつけてその分野ばかり調べたりすると、押しつけになってしまう場合もあります。

山田:ゲストのニーズや要望を聞き出すために、どのようにコミュニケーションを取っていますか?

朽木:デジタル化が進んでも、我々は意外とアナログに電話をしますし、できれば直接お会いしてコミュニケーションを取るようにしています。その方がニュアンスや求めていらっしゃるニーズなどが伝わりますね。文字にするとなんとなく真意が伝わりづらい、というのが色々試してみて感じるところです。

山田:確かに喋るけどわざわざ文章にして書かない、っていうことってたくさんありますし、その時の表情など非言語コミュニケーションから汲み取るものも多いですよね。

朽木:そうですね。無駄話も含めて、過去の旅のストーリーなどから、好きなことや嫌いなことを探っていくのもひとつです。

山田:国内のハイエンド層に響くものや求められていることは?
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文=山田理絵

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