旅が生活の一部。ハイエンドトラベラーは「旅」に何を求めるのか?

マゼランリゾーツの代表 朽木浩志(左)、Urban Cabin Institute パートナー山田理絵


朽木:アドベンチャー的な要素でしょうか。安心、安全でありながらも、もう少し刺激の多い、これまで日本人があまりしてこなかった旅のスタイルですね。

今まではハワイに行っていれば何不自由なく楽しめたけど、それだけじゃ何か物足りなくなっているのかなと。どこへ行くか、誰と行くか、予算の掛け方を考えて旅をするようになるというか。外国人の熱量に日本人が近づいていくのではと思っています。

山田
:日本がインバウンド・アウトバウンドを強化したいなら、まず教育から変えなければいけないと思っています。欧米のライフスタイルに旅が含まれているのは、小さい頃から家族で旅をすることが習慣化されているから。どんな経済状況でも、学校のクラスの大半が、夏は2週間から1カ月、別荘やリゾートに行きますよね。

ところが日本は旅に行く人の方が少ない。旅をできる時間とそれを可能にする教育制度に変えることが、旅行業の活性化には不可欠でないかと思います。働き方もリモートワークが定着するほどに変化しました。教育も変わらなければ。

朽木:そう思います。もっと生活の中に旅を埋め込む。日本では、長い休みを取りづらい、休むことに後ろめたさを感じるようなマインドもあるので、気軽に旅に行けて、さらにそれを堂々とオープンにできる環境が必要ですね。

小さい頃から旅に慣れていると世界がもっと身近になるし、他言語に対する抵抗感もなくなる。それは生き方にも影響してくると思います。

山田:旅をするって豊かなことで、旅をした人の話を聞くだけでも、新しい世界を垣間見れて、豊かに感じるものです。それが、言いにくいからといってシェアされなかったら勿体ない。旅を取り巻く風潮も風通しよくしなきゃいけないですね。


左上)広大な塩湖に沈む夕日を見にボリビアのウユニ塩湖へ。右)ルワンダでレンジャーを従えマウンテンゴリラを探し求めて密林へ。左下)アマゾン川流域の小さな村の子供たちとカヌー

朽木:長期の休みにおすすめな旅先として、例えば南アフリカやモザンビーク、ボツワナ、タンザニア、ナミビアなどは、旅にもってこいの素晴らしい国々で、ラグジュアリートラベラーにとっては天国のような場所。日本人からすると、危ないんじゃないか、行って大丈夫なのか、と思われがちですが、世界のトラベラーはそこを楽しんでいるんです。

山田:アドベンチャーな旅とは具体的にどんな旅ですか?

朽木:ちょうどコロナが始まる直前に、1人で「南極点」に行ってきました。100年前までは、冒険家が命懸けで行っていたところで、最近も日本人の冒険家が自力で成功したのがニュースになっていました。そこに旅行者として南アフリカのケープタウンから安全にいく旅を、イギリスの会社が作ったんです。
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文=山田理絵

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