博士の研究によれば、乳酸菌とその代謝物を土壌に撒くことで、格段に土が改良され、農薬も化学肥料も不要で豊かな実りがもたらされるのだという。ファム・デュ・モンド財団が運営するスリランカの茶畑にも乳酸菌が撒かれ、有機無農薬で元気においしい茶葉が育っている。それは同時に、農園を管理する女性の健康を守ることにもつながる。
和歌山にて。ベジット・イデアス博士(左) とオリヴィエ・シェニョン氏(右)
ロオジエ オリジナル ティーのプロジェクトでは、香りや風味をつけるためにブレンドするスパイスやフルーツも、すべてイデアス博士が世界規模で研究開発し、成功してきた植物を使用している。
例えば、ブータンの国家プロジェクトである王国直轄の畑で育つターメリック。ブータンは脱炭素社会を世界に先駆けて掲げ、ロイヤルファミリーガーデンでは、古来より貴重な植物を栽培してきた。その一つである、香り高いターメリックを使用している。
フランス・ヴェルサイユ宮殿「王の菜園」で栽培されているりんごもその一つだ。同園は、ルイ14世の時代に宮殿に食材を届けるために作られたもので、今も150種以上の在来種のりんごが有機無農薬で栽培されている。さらに、スペイン・アリカンテ県のオリーブの葉。同地に育つ樹齢1000年のオリーブの木々は、その周りに植えられた植物との共生で、長年にわたりエコシステムを構築している。
これらはいずれも、イデアス博士の乳酸菌によって、順調な生育を見せている。シェニョン氏はそうしたイデアス博士の取り組みに共感し、今後は紅茶にとどまらず、樹齢1000年のオリーブの樹から搾ったオリーブ油を調理に使うほか、来館したゲストに販売するという。
また乳酸菌で育った、おいしく栄養価も高い野菜や果物を積極的に調理に使っていく方針だ。同時に、この乳酸菌プロダクトを、有機農法に切り替えられずに困っている農家や生産者へ向けて広めていく活動にも積極的に取り組んでいきたいという。
そうした包括的な取り組みは、ロオジエというブランドがあるからこそ取り組める大きなプロジェクトであり、そこに、シェニョン氏ならではの視点、感性が加わることで、それがまた何倍にも魅力的なものになり、未来へとつながっていく。ラグジュアリーとサステナブルが同じ方向を見据えることで、食の新たな地平が切り拓かれることは間違いない。
連載:シェフが繋ぐ食の未来
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