乳酸菌で畑を豊かに。ロオジエ・エグゼクティブシェフが目指すオーガニックの普及

「ロオジエ」エグゼクティブシェフ オリヴィエ・シェニョン


野菜に関しては、時間の許す限り、有機無農薬栽培の生産者のもとへ足を運び、環境に配慮したものを仕入れるようにしているそうだ。同時に、無農薬にしたくてもなかなかできないでいる生産者への応援も欠かさない。


食用バラの生産者と

日本に比べて、オーガニック先進国であるフランスに生まれ、料理人として働いてきたシェニョン氏の目から見て、日本の農家はまだまだオーガニックに関する意識に関しては、遅れていると感じることも多いという。

しかしながら、それは消費者である我々にも大きな責任があると氏は考える。

「フランスでオーガニック栽培が盛んなのは、消費者がそれを望むからです。つまり需要と供給の関係。日本ももっと一般消費者の意識が高まれば、おのずとオーガニックに切り替える生産者も増えてくるでしょう。ときに、自分のところだけ、オーガニックで栽培しようとすると、近隣の畑に害虫がきて困るといった苦情から踏み切れないといった声も聞きます。そうした声に耳を傾け、自分のできることは力になりたいと思います」

生産者にも消費者にも優しい工夫を


日本では、姿かたちがきれいな野菜を購入することがあたりまえになっていて、傷があったり、曲がっていたりという規格外の野菜は敬遠される。これも、消費者が意識を変えていかなければいけない大きな問題だ。フランスでは「レベル1」「レベル2」というような表示で、傷ありの野菜も安く購入できる仕組みがあるそうだ。

「鳥取の柿農園を訪ねたときのことですが、素晴らしいクオリティの柿なのに、作り手は、傷があるから出荷せず廃棄すると言うんです。それは、フードロスの側面からいっても本当にもったいないこと。生産者の側にも、それを市場に出し、なんら問題がない果実であることを声に出す、勇気をもってほしいと思います」とシェニョン氏は言う。

もう一つ、市場の原理にもよるものだが、価格を守るために、採れすぎてしまった野菜を廃棄してしまうという現実もある。フランスであれば、採れすぎたりんごを料金を取って収穫体験をさせるという方法もよくやるそうだ。これであれば食育にもなり、生産者、消費者双方に利益がもたらされる。

「畑で長ねぎを焼いて食べさせるイベントをテレビで見たことがありますが、そうした野菜のBBQなどを主宰するのもいいでしょう。私が調理するような、シェフと生産者の共同イベントを催してもいいと思います。何かしらの工夫をすることによって、せっかく作った作物を無駄にすることを防ぎたい」と積極的な姿勢を見せてくれる。
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文=小松宏子

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