乳酸菌で畑を豊かに。ロオジエ・エグゼクティブシェフが目指すオーガニックの普及

「ロオジエ」エグゼクティブシェフ オリヴィエ・シェニョン

2022年は、資生堂が創業150年、同グループの資生堂パーラーが創業120年、同社運営のフランス料理店「ロオジエ」が来年創業50年を迎えるという、記念すべき周年だ。そんな節目の年に、これまで以上に真摯にSDGsに取り組んでいくことが、会社全体の指針だという。

その手始めとして、この1月から、ロオジエ、FARO、資生堂パーラーなどの数店舗と製菓工場の電力が、すべて再生可能エネルギーに変更された。それは、太陽光や地熱、風や水などのように、自然界に存在する環境や資源を利用したエネルギーを使うということであり、経費的にはより多くかかっても、地球に優しいということを第一義とする、断固たる企業姿勢の表明であるといえよう。

また、賞味期限が近付いた商品などを、同グループ内の資生堂福祉事業財団に託し、そこから、必要とされている施設や団体へ振り分けて発送するという活動も地道に続けている。

会社全体の取り組みとしてはそうしたものだが、飲食部門のピラミッドの頂点に君臨するグランメゾン「ロオジエ」では、どのような取り組みがなされているのだろうか。ロオジエといえば、2019年度版から4年連続で「ミシュランガイド東京」の三つ星の評価を得ているばかりでなく、今回初めて「ミシュラングリーンスター」も獲得した。これは、サステナブルな食を提供する飲食店に贈られる賞だ。



オーガニック先進国、フランスの視点


「美しい環境を守らなければ、美しい食材を得ることができず、美しい食文化も次世代に残せない」が、ロオジエが掲げる理念だ。具体的には、海の資源を守るために、絶滅危惧種や稚魚は使わず、一本釣りの魚を中心に使用。また、環境に配慮した養鶏場の卵や、有機無農薬栽培の畑からの野菜を使用。さらにキッチンから出る廃油を石鹸にリサイクルする、99%リサイクルビニール袋を使用するなどの取り組みがなされている。

ロオジエのエグゼクティブシェフに就任して10年のオリヴィエ・シェニョン氏は言う。

「私が一本釣りの魚に固執するのは、味がいいのはもちろん、底引き網で捕獲すれば、資源を一網打尽にしてしまうから。そのうえ、売れない魚、値が付かない魚は無駄に捨てられてしまう。それは、海洋資源が枯渇している今、非常に大きなダメージです。だから、長崎や萩の漁港と契約して直接送ってもらったり、豊洲の仲買には、一本釣りを条件に注文し、魚を入手しています」
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文=小松宏子

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