アマゾンのベストプラクティスとは
「想像力」に関連しては、もうひとつお話しておきたいことがあります。実はアマゾンではそれほど「マーケティング・リサーチ」をしません。既存市場を知り過ぎ、現存する顧客の声を聞きすぎると、「すでにお客様が気づいている」顕在化した課題にばかり目がうばわれるからです。
あくまでも先回りして、「お客様や市場がまだ気づいていないところ」に目を配れることが重要。お客様の声をヒントに、やはり「想像」することが必要になります。
ターゲットを絞って「小さく始める」のがアマゾンのベストプラクティス。そしてデジタルの利点もまさに「小さく始めて(小さく失敗して)、成功はスケールできる(規模を広げられる)こと」なのです。デジタルだと、アナログと違って「最少ロット」の縛りや厳しい「費用対効果」などの制約が少ないから、小さく始めることができる。失敗も「小さく」できます。
「成功する人ほど成功より失敗を重視する」といいますが、実はデジタルのいちばんの利点は、小さな失敗を多く経験できる、そして、そこからの学びを蓄積できることではないでしょうか。失敗から学び、ただちに方向転換ができて、「よりよく」もう一1度始められる、そして得た成功を100倍にもすることが、デジタルではできるのです。
クラウドが注目されている理由も、新しくデータセンターを作ったり巨額の投資をしたりせずに、小さな初期投資で始められるからでしょう。実に柔軟な、効率的かつモダンな「道具」だとは思いますね。
アマゾン ウェブ サービスのデジタルイノベーション・リードとして、アマゾンのイノベーション メカニズムとデジタルの力を組み合わせることで今後も、日本の金融産業をお客様起点へ転換していくお手伝いができたら──と考えています。
松本肇子(まつもと・はつこ)◎アマゾン ウェブ サービス ジャパン デジタルイノベーション・リード。毎日新聞社に勤務の後、2000年7月、アマゾン ジャパン(現アマゾン ジャパン合同会社)ローンチのため、ブックス チームの初めてのエディターとして入社。その後、メディア商品、キッチン用品、家電、ファッションなどの新ストアの立ち上げに参画のほか、アマゾン初のサステイナビリティプログラムAmazon Greenを担当。マーケティング、プロダクトマネージメント業務を通じ、一貫してカスタマーエクスペリエンス向上に従事した後、現職。2011年よりCX Bar Raiser。