ビジネス

2022.02.18 08:00

アマゾン ウェブ サービス x イーデザイン損保の「ありそうでなかった」発想、合言葉は『顧客起点』


社内でも仮想プレスリリースをレビュー


ワークショップで顧客の方たちが書いた仮想プレスリリースは、「多様な」「フレッシュな」視点を入れるため、私を含めた参加者全員でレビューします。私がこの時に気をつけているのは、ビジネス・レビュアーとしてではなく、お客様のadvocate (代弁者)としてリリース原稿を読むことです。お客様の気持ちになって読んで、感じたことを代弁しようと強く心がけています。

実は私は社内では、業務のほかに「Customer Experience Bar Raisers(CXBR、カスタマー・エクスペリエンス・バーレイザー)」としての役割も果たしています。社内のさまざまな部署で作成される仮想プレスリリースをレビューするのがその役割です。つまり、顧客とワークショップでしていることを、社内でもやっているのです。

アマゾン本社の会議室には、「ある人物」のために確保された、誰も座らない椅子があります。創業者のジェフ・ベゾスをはじめ執行役員たちが出席する会議であっても、その椅子はかならず空席。そしてその「もの言わぬ椅子」に座るべき最重要人物、アマゾンがその意見をもっとも聞きたいキーマンこそが、「顧客」だったのです。


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そして、「もの言わぬ椅子」に座っているカスタマーを想像し、成り代わって発言する「代弁者」として機能するのが、私を含む「CX Bar Raiser (CXBR)」たちであり、すべての社員もそうあろうと心がけています。(編集部注:2012年のForbes USの記事で、ジェフ・ベゾスは「特別に訓練された彼らCX Bar Raiserたちが眉をひそめると、VP(執行役員)たちはふるえあがる」と言っている。ちなみにCX Bar Raiserは世界のアマゾンに数十人。日本には3人のみだ)。

プレスリリースへのCXBRとしてのレビューでは、あえて自分の担当部署以外の領域に関わるようにして、新鮮な視点でインサイトを提供することを心掛けています。ワークショップでのレビューも、多様な視点が入るように、純粋に「お客様の代弁者」としてレビューしているのと同じです。

アマゾンが、金融出身者でない私をあえて金融業界のイノベーション リードに起用したのも、専門家でないからこそ、業界の前提条件に縛られずに顧客起点の議論をリードできるはずだと考えたからです。

その採用理由を聞いたとき、私の役割は、アマゾンのカルチャーを土台に、特定分野の歴史的文脈の先入観はぬぐい、自分の想像力を発揮して、前述した「Are Right, A Lot(経験に裏打ちされた直感をもとに発想する)」を行うことなんだと悟りました。
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文=石井節子 写真=曽川拓哉

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