コールセンターのKPIを変えよう──経験と直感に支えられた「顧客起点」
もうひとつ、別のお客様とのワークショップで印象的だったのが、現場の若い社員の方が「コールセンターのKPI(重要業績評価指標)を変えましょう」と提言したことです。
基本的にコールセンターのKPIは「短時間でより多くのインバウンドコール件数をこなす」こと。とはいえデータドリブンの経営には、とくにお客様の声こそが資産になります。
とりわけコロナ禍以来、金融機関の窓口に実際に来られないお客様がオンラインで相談をしてくるようになった。そこには価値の高い情報が、コロナ禍以前よりも多く秘められているのです。
その提言者は、「オペレーション”効率”」のKPIだけでなく、「応対”品質”」のKPIも重要、ということに気づいたのです。適切なKPIを設定することで、お客様に対してより丁寧で心のこもった応対ができると発想したのですね。
「高品質のアウトプットを得るために適切なKPIを設定することが重要」というのは、ありそうでなかった考え方で新鮮さを感じましたし、顧客起点にたって過去の経験といまを照らし合わせ、洞察した結果たどり着いた「KPIを変えよう」の発想は、まさにアマゾンのもう1つのOLP、「Are Right, A Lot(経験に裏打ちされた直感をもとに判断する)の体現でもありました。
われわれはお客様の「代弁」をし、「支援」をするだけ
イノベーション プログラムのコンサルティングとは違う大きな特徴は、あくまでも主役は顧客である金融機関であり、顧客自身に「主体的に」考えてもらうという点です。われわれは考えるプロセスの「支援」をするだけなのです。
ワークショップで課題が洗い出され、その課題解決が利益をもたらす「お客様」の顔がはっきり見え、届けるべきサービスや価値が特定でき、「こういったプログラムを実装する必要がある」となっても、AWSから提供するわけではありません。あくまでもそれらをつくるのは顧客の方たちなのです。
「あくまでも主役は顧客である金融機関であり、顧客自身に『主体的に』考えてもらう」
アマゾンには、「なければ自分たちでつくってしまおう」と考え、行動する「ビルダー」であろうという文化があります。採用の際にも、応募者に「ビルダー」の資質があるか、リソースゼロのところからプロジェクトを立ち上げるマインドを持っているかどうかを見極めようとします。
AWS でのワークショップでも顧客にビルダーになってもらうことを大切にしています。つまり、アイディアを外部へ丸投げするのではなく、まずお客様が主体となって何を作りたいのか徹底的に考えてもらうのです。AWS はお客様と伴走する形で、プロトタイプ構築の支援を行ったり、アイディアを一緒に実現できそうな優秀なスタートアップを紹介するなど、実現へ向けたサポートをします。