オハイオ州で最近公開された政府資料により、2021年11月にDEA(麻薬取締局)の捜査官がフェイスブック傘下のWhatsAppに対し、中国とマカオを拠点とする7人のユーザーの追跡を要求していたことが明らかになった。資料によると、DEAは監視対象者の身元を把握していなかったが、彼らが通信で利用しているIPアドレスと番号や、WhatsAppアプリをいつ、どのように利用したかを監視するよう同社に指示したという。
このような監視活動は、1986年に制定された「ペンレジスタ法」に基づいて行われ、そのオペレーションには特定の電話回線からダイヤルされるすべての電話番号に関するデータをキャプチャするペンレジスタというテクノロジーが用いられる。ここでは、アプリでやり取りされるメッセージの内容は監視されない。そもそも、WhatsAppはエンドツーエンドで暗号化されているため、メッセージ内容を確認することが不可能だ。
フォーブスが過去に報じた通り、米国の法執行機関は、少なくとも過去2年に渡ってWhatsAppをはじめとするテック企業に正当な理由を示すことなく、ペンレジスタの設置を繰り返し命令してきた。過去のケースと同じく、今回も司法省は中国人ユーザーの追跡を許可する上で、3つの要素を満たせばよいとしている。
その3つの要素とは、申請を行う弁護士または法執行官の身元の開示、申請を行う機関の名称の開示、取得する情報が当該機関による犯罪捜査に関連するものであることを証明する書類の提出だ。
今回の件は、米政府による追跡の対象が、政府が身元を把握していない海外ユーザーをターゲットにしていることを示している。フォーブスが入手した別の裁判資料によると、米政府は、オハイオ州で米国人3名とメキシコ人4名のWhatsAppユーザーを追跡していたという。このケースでは、政府は彼らの偽名か本名のいずれかを把握していた。