ウォルマートは昨年以降、中国のさまざまな問題に関連して、政府、そして国家主義的な主張の影響を受けた市民からの攻撃を受けている。その攻勢は、少なくともはた目には、まるで同社を脅すための組織的な活動のようにも見える。
成都市では先ごろ、食品の安全性に関する懸念があるとして、市場規制当局がウォルマート系列の会員制スーバー、サムズ・クラブに関する調査を行うと発表した。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルはこれについて、「当局は、腐った牛肉が販売されていたとする消費者からの苦情を受け、調査を開始したと説明している」と伝えている。
だが、この調査は、ウォルマートが昨年末から中国の新疆ウイグル自治区で生産された商品の販売を停止したとみられることに対し、当局が関心を強めていることを示す一例だと考えられる。
米政府は昨年12月、中国最大の綿花の栽培地域であり、衣料品や家庭用品(繊維製品)を大量に生産する同自治区からの輸入を原則として禁止した。米国をはじめ各国は、中国政府が「同化」戦略のもと、イスラム教徒を中心とする同自治区の住民の多くを拘束していると非難している。一方、中国側は、そうした批判の内容を否定している。
ウォルマートは今のところ、中国国内で起きているこうした一連のことについても、成都市での調査についても、何もコメントしていない。一方で中国メディアは、同社が昨年、およそ5万ドル(約570万円)の罰金を科されたことを今になって改めて報じるなど、異例の行動に出ている。
中国への依存度は高い
ウォルマートが中国市場に参入したのは、1996年。サムズ・クラブと合わせて現在、400店舗以上を展開している。明らかになっている直近の年間売上高は、約114億3000万ドル。中国は同社にとって、米国・カナダ以外では、メキシコ・中米に次いで2番目に大きな市場だ。
世界最大の小売チェーンであるウォルマート全体の売上高は、およそ5590億ドルにのぼる。だが、英国では昨年、傘下のスーパー、アズダを売却。日本やドイツ、ブラジルなど、その他の多くの市場からも撤退している。つまり、中国は同社にとって、自国以外で成功を収めた数少ない市場でもある。
中国の習近平国家主席はこのところ、さまざまな国際的課題への対応について、積極的な姿勢を見せ始めている。各国との摩擦は、ウォルマートをますます厄介な立場に追い込むことになるかもしれない。