経済・社会

2022.01.14 06:30

自力で脱法資金稼ぎも 世界の外交官残酷物語


米国政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア」は今月、北朝鮮の在クウェート大使代理を務め、2019年に脱北した元外交官リュ・ヒョヌ氏のインタビューを報じた。インタビューによれば、国連制裁によって北朝鮮は国際金融網から追放された。このため、本国からクウェートの現地銀行にある大使館口座への送金が途絶え、北京の北朝鮮大使館に現金を受け取りに出向くしか方法がなくなった。2017年から資金繰りが困難になり、8カ月間資金がない状態もあったという。リュ氏によれば、外務省から派遣された大使館員は、不十分ながら月給もあり、自宅の居住費や通信費、交通費などは本国の支援を受けることができた。ただ、外貨を稼ぐために送り込まれ、名義上の外交官になっているだけの大使館員はすべて自力で外貨を稼ぐ必要に迫られていたという。

クウェートなど、世界各地の北朝鮮外交官は資金難にあえぎ、できるだけ大使館で家族も含めた集団生活を送ることにしているという。北朝鮮の外交団リストには、よく女性の名前も記載されている。男女平等が進んでいるということではなく、家族も戦力として投入しているという意味だ。ニューヨークの国連本部のそばにある北朝鮮の国連代表部が入居する雑居ビルに取材に赴いたとき、ドアの向こうからテンジャンチゲのようなにおいが漂ってきたことがある。ほとんどの人が自炊と合宿生活を送っているようだった。

アフガニスタンと北朝鮮、どちらの外交官も大変な状況には変わりあるまい。

一方、世界に散らばる日本の各在外公館には、昨年末、ほんの少しだが、それぞれの館員におせちセットが配られたという。外務省の福利厚生組織からの支給品だという。生鮮食品は送れないだろうが、アフリカなど、日本食品を入手しにくい場所では貴重な贈り物になっただろう。日本の外交官も様々な苦労があるだろうが、生活費の捻出で苦しんでいるということはなさそうだ。是非、北朝鮮やアフガニスタンの外交官に負けない活躍を期待したい。

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文=牧野愛博

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