キャリア・教育

2022.08.05 18:00

評価は比較。みんなの基準となる「ものさし」の作り方


ここにはもう、厳密な科学なんてものは存在しません。評価者それぞれが、ひたすら野球の試合を観て、美容師の仕事ぶりを見て、映画やTVドラマを観て、目を養っていくしかないのです。評価者それぞれが考える“平均”に多少のずれが生じることは不可避であるということを受け入れつつ、なるべくそれが生じないように、“基準のすり合わせ”という不断の努力をしていくしかありません。

実際に、僕がいたボストンレッドソックスではスカウト用のビデオ集があって、例えば、ひたすら色んなピッチャーが投げるスライダーがずっと続くのです。それを観ながら「これは60点のスライダーだね、40点だね、いや、45点かな?」と議論する訓練をしました。

どういうスライダーであれば平均より上である、といったルールはありません。変化量とか、制球とか、球速とか、腕の振りの良し悪しとか、スライダーという項目の下にさらに細かい項目を設けることもできるわけですが、レッドソックスのスカウティングレポートをデザインした人は、あえてそこは各スカウトの裁量に任せる、という形をとったのでしょう。各スカウトが評価の根拠をしっかりと説明できればいいことになっていました。


Lutsenko_Oleksandr / Shutterstock.com

数字が存在する項目に関しては、その数字をそのまま使うというやり方もあるでしょう。身長はセンチメートル、レストランの定食の値段については円を使えばいい。

ただし、一見不変に見えるこれらの基準も、実は変化してしまいます。日本人の平均身長はどんどん高くなっていますよね。メジャーでも、ストレートの平均球速が変わっています。10年程前には時速90マイル(約145キロ)が平均と言われていましたが、今では「93 is the new 90」と言われています。時速93マイル(約150キロ)が基準になりつつあるのです。

まずは統一した物差しを作る。その際、その物差しの長さがすぐに伸び縮みしないように気をつける。そして、あとは地道にみんなで、物差しの長さが変わっていないか定期的にチェックする、ということが大事です。

次回(8月6日公開)は「評価」のデザインに関する基礎的な話の最終回として、M-1グランプリのケースを通じて、全体を振り返りながら、重要なポイントをお伝えしたいと思います。

>> 連載:メジャーリーグで学んだ「人を評価する方法」

編集=宇藤智子

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