レーダーチャートで人の本当の評価をすると間違える

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欠落しがちな視点


皆さん、何かの評価について、冒頭の画像のようなチャートを目にしたことはおありですよね。これはレーダーチャートと呼ばれるグラフで、人物や組織の項目ごとの評価に使用されます。

前回までで、評価項目の設定が終わって、定義もしっかり定まった。あとはこんなふうに、実際の評価をどんどん入れていってもらえばいい…と言いたいところですが、このチャートには致命的な欠点がある可能性があります。さて、どんな点でしょう。

ここで、昔の話をさせてください。サンフランシスコ・ジャイアンツで日本地域担当のスカウトとして仕事をしていた時に、日本のプロ野球からメジャーリーグ行きを希望していた選手(T選手としましょう)がいました。

ある年、T選手はシーズン中に足を怪我して、長期離脱を余儀なくされてしまいます。もちろん彼の本来の実力に関しては、僕やアメリカ本国からやってきた上司がレポートを提出して評価済みなのですが、その足の故障が決して軽いものではなかったので、影響が気になりました。

“脚力”を評価できなかった理由


果たして、今まで通りに守備や走塁ができるのか。移籍が行われるシーズンオフまでに見極めたいところなのですが、彼は離脱したまま。

ようやくシーズン終盤のプレイオフ(上位チームによる短期決戦)にぶっつけ本番で復帰することになり、上司から「しっかりと見極めてこい」と言われて僕はプレイオフの舞台、札幌ドームに飛びます。

T選手のチームにとって、負けたら終わりの大事な決戦ですが、僕や他球団のスカウトたちにとっても、2、3試合のみで彼の故障後の状態を評価しなくてはいけない、大事な機会となりました。

シーズン後、T選手をジャイアンツ球団として獲得するのか。その場合、どれくらいの年俸のオファーが妥当か。メジャーでは年収が何十億という選手もいますし、最低年俸ですら数千万円です。スカウトの選手評価が、それだけの投資金額の妥当性を決めることになるわけです。
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編集=宇藤智子

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