2020年9月の公開へと変更されたが、コロナ禍によって翌2月に再々延期。その後、感染拡大や他の作品との兼ね合いなどもあり、4度、全米での公開日が変更され、日本でもようやくこのクリスマスイブに上映となった。
第1作の「キングスマン」(2014年)に続き、2作目の「キングスマン:ゴールデン・サークル」(2017年)から約4年を経て、実に待ちに待った新作の登場ということになる。
「アラビアのロレンス」のような作品
前2作を観た方ならご存知かもしないが、最新作の「キングスマン ファースト・エージェント」は、どこの国にも属さない民間のスパイ組織である「キングスマン」の誕生秘話を描いたものだ。
第1作の「キングスマン」では、組織を運営する英国紳士のハリー・ハート(コリン・ファース)が労働者階級出身の若者ゲイリー・“エグジー”・アンウィン(タロン・エガートン)をスカウトして、優秀なスパイへと育てあげる成長物語が描かれていた。
第2作の「キングスマン:ゴールデン・サークル」は、エグジーがアメリカの民間スパイ組織である「ステイツマン」に乗り込み、ともに世界最大の麻薬密売組織と戦うというストーリーだった。
少々乱暴な言い方をすれば、これまでの「キングスマン」シリーズは、ジェームズ・ボンドが超人的活躍をする「007」と、それをパロディ化した「オースティン・パワーズ」(1997年)を足して2で割ったような雰囲気があった。スパイが繰り広げるスーパーアクションと少しくだけたコメディ的要素が満載な作品だった。
しかし、この最新作「キングスマン ファースト・エージェント」では、監督のマシュー・ボーンは、これまで得意としてきた、おふざけ的ブラックユーモアの色彩は弱め、かなり正統派のスパイ映画をめざそうとしているように思える。しかも舞台は第一次大戦前夜のヨーロッパで、歴史の裏面をシリアスに描く密度の濃いドラマともなっている。