「キングスマン」最新作は、シリーズの源流を辿る歴史アドベンチャー

松崎 美和子

「キングスマン」シリーズの「原器」


「キングスマン ファースト・エージェント」は、アクションアドベンチャー作品としても一級品だ。アクションのシーンは、前2作をも凌ぐスケールで描かれており、特に断崖絶壁の上に建つ悪の集団のアジトでのバトルには、面白い趣向も凝らされている。

作品中、最大の敵役となるのが、実在の人物でもあった怪僧ラスプーチン(リス・エヴァンス)。主人公のオックスフォード公が、ロシアの宮殿に乗り込んで、宮廷を牛耳るラスプーチンと対決するシーンでは、民俗的ダンスも織り込まれた華麗なアクションが炸裂する。「ラスプーチンを、ずっと演じたかった」というリス・エヴァンスの存在感にも圧倒される。


12月24日(金)より公開(c)2021 20th Century Studios.All Rights Reserved.

また、従兄弟同士でありながら、互いに戦争で対峙するイギリス国王、ドイツ皇帝、ロシア皇帝を、1人の俳優(トム・ホランダー)が演じており、この配役も作品の見どころの1つかもしれない。1人3役を演じたホランダーは語る。

「監督の名案です。よく知られているように、ヨーロッパの王族というのは、みな親戚関係にある。だからこそ、戦争になった。同盟したり、ライバル意識を燃やしたりするからね。彼ら3人は従兄弟同士だったので、同じ俳優が演じるのは気の利いたジョークだ」

これまでの「キングスマン」シリーズとは違った作品と監督も言うが、やはりこのような洒落た演出も所々に忍ばせてはある。その意味では、これまでのファンも楽しませる作品となっている。

「笑って泣いて、想像を超える旅へと連れて行ってくれる、壮大な冒険映画が完成した。シリーズのファンは、本作を通してファンでいる理由を確認することになるだろう。そして、ファンでない人には、本作でファンになってもらえるとうれしいね」

このようにボーン監督は語るが、主役のオックスフォード公を演じたレイフ・ファインズの言葉も、このシリーズが訴えかけるものを象徴している。

「キングスマンとはどうあるべきか。人命を守り、持続させることが使命。キングスマンは、一国家が運営する諜報機関の役所仕事から切り離された、どの国家にも属さないスパイ機関だ。それは、平和と人類愛という原則を大切に持ち続けるためであり、彼らの存在理由でもある。悪や不正と闘うために存在する、アーサー王伝説の騎士と同じイメージだ」

ちなみに「キングスマン ファースト・エージェント」の原題は「The King’s Man」。第1作目の「キングスマン」が「Kingsman: The Secret Service」だったので、「The」という定冠詞が冠せられているぶん、この作品が「キングスマン」シリーズの出発点となる「原器」であるのかもしれない。

連載:シネマ未来鏡
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文=稲垣伸寿

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