「キングスマン」最新作は、シリーズの源流を辿る歴史アドベンチャー


時代は1914年、世界大戦を引き起こそうとする悪の集団が、ヨーロッパ各地に工作員を送り込んでいた。ロシアの宮廷に入り込んだ怪僧、大戦の引き金を引くべくサラエボに現れた暗殺犯、アメリカ大統領にハニートラップを仕掛ける女性スパイなどの暗躍によって、世界は戦火に包まれていく。

一方、平和を願うイギリス貴族のオックスフォード公(レイフ・ファインズ)は、独自の諜報網で各国の不穏な動きを察知して、悪の集団の陰謀を阻止するべく立ち上がる。しかし、彼の息子であるコンラッド(ハリス・ディキンソン)は、父の意に反して、持ち前の正義感から第一次大戦の苛烈な戦地に赴くのだった。

物語は、民間のスパイ組織「キングスマン」の創始者となるオックスフォード公のファーストミッションを中心に描かれていくが、息子コンラッドとの戦争に対する考え方の違いも、作品から発信される平和ヘのメッセージとも繋がっていく。

また、時代設定が100年以上も前のため、前2作で活躍したハリー・ハートもエグジーも登場はしない。「キングスマン」のシリーズではあるが、印象としては、まったく異なるテイストの作品と考えてもいいかもしれない。

脚本と製作にも関わったマシュー・ボーン監督も、これまでのシリーズとは「何か違うことをやりたかった」と語る。

「ぼくがめざしたのは、大掛かりで、壮大なアドベンチャー作品。子供の頃、『アラビアのロレンス』(1962年)のような映画がたくさん上映されていて、いわゆる叙事詩だけれど、まったく退屈することはなかった。ちょうど、あのジャンルをまた盛り上げたいと考えていたんだ」


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実際の作品も、歴史上の実在の人物が活躍する、スケール感のあるシリアスな物語に仕上がっている。コメディ的要素も一部では取り入れられてはいるが、これまでの「キングスマン」シリーズとは一線を画すものとなっているのは間違いない。脚本を共同執筆したカール・ガイダシェクも次のように語る。

「ぼくたちが書こうとしていた脚本は、前2作と同じではなく、独自の新しいトーンになるということだ。歴史を踏まえながら、ワイルドかつパンクで、エッジの効いたトーンを見事に融合させたバージョンにしようと考えた。さらに、第一次世界大戦の結果である甚大な犠牲に対する、リアルかつエモーショナルな要素も加えた」

もちろん作品にはフィクションの要素も盛り込まれているが、当時の歴史的背景や政治状況もきちんと描かれ、世界がなぜ戦争に突き進んでいったかにも触れられている。脚本のガイダシェクが言うように、メッセージを発信する作品ともなっている。

「年代も出来事も正確だし、歴史上で起きたすべてのことを尊重した。そのうえで、史実の裏側の誰も見ていないところでは、こんなことが起きていたかもしれないという発想を駆使して書き上げた」(脚本のガイダシェク)
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文=稲垣伸寿

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