また、BECOULETさんは、この村がワインの産地で夏の観光地であることにも注目しており、観光客の足としての利用も眼中に入れている。「観光シーズン中は、自動車の台数を増やせば、観光客の利用も促進できます。レンタカーより格安で必要時にレンタルして周辺を移動できるので、集客に繋がり、村の観光産業へも貢献できる」
目下の契約状況については、「MOBIDREAMによる最初の車が走るのは、今年の終わりになる予定です。訪問介護サービスを提供する協会との契約で、介護士さんが各世帯を訪問するのに車を使用する予定です。また若年層の職業支援組織からも2件の契約が決まっています」とBECOULETさんは続ける。
将来的には、MOBIDREAMは、ロワール地域だけでなく他地域への展開も目指している。今回、サンセールの広場で紹介されたカーシェアリング用のEVは、仏自動車メーカー・シトローエン(現在はステランティスが所有するブランドの一つ)で同社の事業パートナーである。
近い将来、自動車の最高速度を運転手の免許書のタイプによって自動的に選択できるシステムの導入(原付免許所有者の場合は45km、自動車免許所有者は75km)を予定しており、他の大手自動車メーカーとの提携も積極的に行っていく。
MOBIDREAMのカーシェアリング利用システムは、次のように手順になっている。
自分用のアカウントを開設し、最低額50ユーロ(約6600円)を入金
自分用のパスワードと携帯用アプリをダウンロードするリンクが送信される
最寄りのステーションで、自動車の空きがあるかを確認・予約
車の開閉は携帯のアプリで行い、自分用のパスワードでエンジンを始動させる
使用するにあたって、利用者には2種類の選択が用意されている
1. 契約なしで必要に応じて利用する場合
使用者は、運転を開始したステーションへ車を返却する
車の電池の残量を確認し、充電する
充電ステーションへの駐車は無料
2. 契約利用
運転開始ステーションとは別のステーションへ車を返却できる
このサービスは、一定の地域に居住していることが条件となる
使い終わった後の充電の必要はなし
利用料金は車の使用時間に基づいており、1時間5ユーロ(約660円)で2時間を超えると割引、また身体障害者には50%の割引が適用される。求職中の若者には、職業斡旋所との協力で無料にて車を提供することになっている。
MOBIDREAMのカーシェアリング、決して安価ではない普通車のカーシェアリングに比べ、自動車のサイズや時速に制限はあるものの、低料金でのサービス提供は、公共交通手段の不足、若者の高失業率、離婚率が高いため母子・父子家庭率が高いこと、平均所得が低いことなど、フランスの地方の抱える問題を十分に把握したイノベーション・プロジェクトだ。
炭素排出・騒音ゼロ、スピードは出ないが、その分安全性も高い。このようなタイプのカーシェアリングが普及すれば、車を所有しない「新しい通常」が生まれ、近い将来地方における移動手段における大きな変革が訪れるかもしれない。
取材協力: MOBIDREAM最高経営責任者(CEO) Philippe BECOULET氏
【参考サイト】MOBIDREAM、Les solutions de mobilité pour tous、La loi d’orientation des mobilités
この記事は、2021年11月にリリースされたCircular Economy Hubからの転載です。
連載:国内外のサーキュラーエコノミー最新動向
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