#しかたなくない 渋谷から始まる「我慢を変える」プロジェクト


なかなか発信しにくい「性」の話


そこで、「街に若者が多く、ダイバーシティの推進にも力を入れている渋谷区を起点にしたい」と渋谷未来デザインに声をかけ、協働がスタートした。

「民間企業も自治体もそれぞれの発信力には限界がありますが、特別に発信力の高い渋谷区で一緒に取り組むことで、大きなインパクトを生み出せると考えました」

渋谷未来デザインの理事・事務局次長を務める長田新子によると、渋谷区にとっても、「体」や「性」といったテーマは、今まさに取り組みを強化したい分野だった。

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渋谷未来デザインの長田新子

渋谷未来デザインは、2018年4月の発足後から「ダイバーシティ&インクルージョン」をキーワードに多くのプロジェクトを推進してきた。ただ、特に「性」というテーマでは、オープンに発信したり議論をしたりする機会がなく、課題を感じていたという。

こうした啓発活動は、民間企業やNGO、個人などバラバラに動いていてもインパクトを出しにくい。渋谷未来デザインのようなイノベーションプラットフォームが入って各組織が連携し、一過性ではない継続的な取り組みに育てることが重要だ。

「ネクイノさんからプロジェクトのお話をいただいたときは、渋谷区としてもこうしたテーマで発信したい、という機運が高まっていたタイミングでした」

「しかたなくない」をどうしていくか?


「#しかたなくない」プロジェクト第1弾のメイン施策としてまず取り組んだのが、オリジナル雑誌「#しかたなくない マガジン」の制作。A5版64ページというボリュームで、カラフルな表紙デザインは「しかたなくない」を乗り越えた、美しい朗らかな世界観をイメージしている。

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本誌が目指すのは、「しかたなくない」の先にある「ではどうしていくか」というアクションを、読者が身近な人たちとともに考えるきっかけになるようなメディア。まず巻頭特集では、生理やセックス、避妊に関する意識調査などで、「“しかたない”の今」を浮き彫りにした。

その後「働き方をあきらめることはしかたなくない」「セックスの話がタブーなのはしかたなくない」「自分を後回しにしてしまうことはしかたなくない」と、それぞれをテーマにした特集が続く。

企画制作を担当したのはクリエイティブスタジオREING(リング)。プロデューサーのユリ アボによると、こうしたテーマは「女性特有の問題」だと捉えられてしまったり、「男性が悪い・女性は大変」と誰かが非難されたりすることもあるが、そうならないように工夫したという。実際に誌面には、男性やLGBTQの人が登場する。さらに、学生から社会人まで様々な読者に刺さる内容とした。

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REINGのユリ アボ

「センシティブなテーマだからこそ、言葉を慎重に選びました。ときにはディスカッションを重ねることも。どれかひとつでも『自分のことかも』『自分の大切な人の話かも』と思っていただけると嬉しいです」
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文=堤美佳子 取材・編集=田中友梨 撮影=小田光二

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