でも、これって本当に、私たちが憧れるべき「美しさ」なのだっけ?
ユニリーバのLUX(ラックス)が、そんな問題提起をするプロジェクトをスタートした。
「LUX」は1989年にヘアケアブランドをスタートした。ハリウッド女優を起用したCMの影響もあり、“海外発のブランド”というイメージが強いが、実はヘアケア商品を売り出したのは日本が初めてだった。
当時の日本は男女雇用機会均等法が制定され、女性の社会進出への機運が高まっていた。その中で、美しい髪を通じて女性に自信を与え、女性の活躍を後押ししていくというLUXのブランド姿勢は、日本の女性たちの心を掴んだ。現在もヘアケア市場全体のブランド別売上高でナンバー1を誇るなど、変わらぬ人気を誇っている。
一見順調に見えるLUXだが、誕生から30年超、時代も変わり、課題に直面している。発売当初は若年であった中心購入層がそのまま持ち上がり、現在のメインは50~60代。ブランドがこの先長く生き続けるには、Z世代の獲得が不可欠だという。
そこでユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングは、今年9月にLUXのブランドビジョンを刷新。「LUX BRAVE VISION 2030」を掲げ、“自分自身を美しいと思えることが自信になり、一歩踏みだす勇気につながること、そしてその踏みだす姿勢こそが、美しいという信念”と打ち出した。
画一的な美しさから、多様な美しさへ
「LUXが発売されてからこれまでの30年間で、『美しさ』の考え方は変化してきました」
そう語るのは、LUXのブランドマネージャーを務める河田瑶子だ。かつて多くの人が憧れた「美しさ」は、レッドカーペットを颯爽と歩くハリウッドスターやセレブリティのように、自らの現実とは一線を画した高みにあった。
しかしここ10年は、SNSの普及でスターの普段の生活が垣間見えるようになったり、健康的な美しさ、内面的な美しさ、生き方の美しさなど、多様な美しさが言及されるようになったりち、価値観が変化してきている。
「消費者の美しさに対する考え方がアップグレードされていく中でも、LUXは発売当初のイメージを守り続けてきました。そのため、少しずつ世間とのズレが感じられるようになり、社内で何度も話し合いを重ねた末、リブランディングを決意したんです」
このリブランディングにおける軸は、従来の「美しさ」への固定観念から脱却すること。内面の美しさも含めて、年齢や肩書き、性別に捉われない、一人ひとりが持つ美しさに注目し、現代の若者の共感を得るブランドとしての生まれ変わりを目指した。