鍵を握るのは「くまモン」。熊本県の「SDGsモデル」は広がるか?

「熊本県SDGs登録制度」に登録されると使用できる「くまモン」のロゴマーク


細かな議論を生む「チェックリスト」


地方自治体におけるSDGsの推進は、地元の大手企業はもちろん、中堅や中小の企業を巻き込みながら、ローカライズした形で定着させていくことが重要だ。

熊本県SDGs登録制度の目的は、県内の企業や団体が、SDGsと事業活動との関連について「気付き」を得るとともに、具体的な取り組みを進めてもらうこと。

SDGsの普及を促進し、かつ新たな価値の創造を促す先進企業の取り組みを「見える化」することで、持続可能な社会とSDGsを原動力とした地方創生の実現を目指している。

登録に際しての主な要件は、1. 2030年までに「目指す姿」や環境・社会・経済の3側面における重点的な取り組みを明確に示していること、2. 自らの活動と、SDGs の17のゴール及び169のターゲットとの関連付けがなされていることの2点だ。

先駆的なのは、2の要件で、SDGsの17ゴールのみならず169のターゲットまで関連付けた細かいチェックリストをつくらせるところだ。登録申請書にもターゲットがしっかりと記載されている。必然的に組織内でもこれらのターゲットを整理して、細かな議論を展開することになる。

169のターゲットレベルまで踏み込んでいるので、企業内でターゲットごとの担当を決めていけば、SDGsが企業内の各部署に浸透していく仕組みだ。

登録後のフォローにも期待


さらに、この制度では、企業の体系的な取り組みが、対外的に発信されるという効果もある。登録されると、SDGsの達成に積極的に取り組む企業・団体として、県のホームページで紹介される。

具体的には、各事業者の「熊本県SDGs登録申請書」と「SDGs達成に向けた取り組みチェックリスト」が掲載される。県のお墨付きを得られるだけでなく、ホームページを通じたPR効果も期待できるのだ。また今後は、市町村や金融機関などによる伴走支援も検討されているという。

10月1日には第2期登録の申請受付を開始。10月31日に締め切られたが、前回を超える応募数となっているそうだ。

こうした制度は、自治体側の設計のみならず、その後の運営やフォローアップがとても重要だ。実際に企業がSDGsを経営に取り込み始めると、現場ではさまざまな疑問もわいてくる。

その際に、自治体が丁寧に指導することが大切になる。熊本県の場合はオープンな雰囲気と熱意が感じられ、登録後のフォローも大いに期待できそうだ。
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文=笹谷秀光

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