鍵を握るのは「くまモン」。熊本県の「SDGsモデル」は広がるか?

「熊本県SDGs登録制度」に登録されると使用できる「くまモン」のロゴマーク

熊本市は、熊本城のふもと、路面電車が走る路面の緑地化を進めるなど、環境にやさしい街として知られる。2019年には内閣府が定める「SDGs未来都市」にも選定されている。

県庁のある熊本市だけでなく、県もまた蒲島郁夫知事のもと、SDGs達成に向けて尽力している。この10月29日には、SDGsに積極的に取り組む県内の企業・団体を登録する「熊本県SDGs登録制度」の登録証交付式を開催し、第1期として、肥後銀行や熊本銀行、熊本大学など442の事業者が登録された。

筆者は、この交付式で記念講演をするため熊本県を訪れたが、その際、蒲島知事に話を聞く機会を得た。今回は、蒲島知事の話も踏まえ、熊本県におけるSDGsに対する真摯な取組について紹介したい。

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路面が緑地化された路面電車

「熊本県SDGs登録制度」とは?


蒲島知事は、「聞く力」を感じさせる穏やかなお人柄をお持ちの方。

そんな知事が考える最大の使命は、コロナ禍への対応と、2016年の熊本地震と2020年の豪雨災害からの創造的復興である。

それらを推進するため、今年3月に発表した「新しいくまもと創造に向けた基本方針」では、すべての取り組みの基本として「SDGs」を掲げ、「誰一人取り残さない くまもとづくり」を進めていくと表明した。

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蒲島知事(左)は、筆者との会談で「『逆境の中にこそ夢がある』という信念のもと、SDGsをベースに『県民総幸福量の最大化』を目指します」と力強く語った

その「誰一人取り残さないくまもとづくり」を推進するための、蒲島知事の肝入りの施策が、今回第一期事業者の交付式を行った「熊本県SDGs登録制度」だ。

今年1月に、県企画振興部長の陣頭指揮で創設し、これまで政策審議監、企画課長、企画課メンバーによるチームが、総力で制度設計・運営にあたってきた。制度の検討段階から、熊本市、水俣市、小国町などの自治体や、肥後銀行、熊本銀行、三井住友海上といった金融機関なども参加してつくり上げた。

交付を受けた企業や団体の登録期間はまず3年間、その後も更新可能だ。蒲島知事は「第一期にもかかわらず、多くの事業者にご登録いただけた。これは、県民のSDGsへの熱意の高さの反映ではないか」と語る。また2030年までに1000事業者の登録を目標にしているという。
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文=笹谷秀光

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