同僚との話し合いを進める
ハーバード大学医学部マクリーン病院コーチング研究所の創設者であり、名著『ハーバード流こころのマネジメント──予測不能の人生を思い通りに生きる方法』(邦訳、2018年、ダイヤモンド社刊)もある心理学者スーザン・デイビッドは、同僚の行動があなたの仕事やキャリアに支障を及ぼさない限りは、深追いせず自分の仕事に専念する方が賢明、と言っています。ここでは、同僚の不適切な行動により、あなたの仕事に支障を来すようになった場合、その同僚との話し合いを進める際の対処方法を紹介します。
相手の立場になって考える (Put yourself in their shoes):同僚の振る舞いの背景に何か原因があるかもしれません。単に無責任とかやる気がないだけの問題ではない可能性も考えることが大切です。無理のない範囲で構わないので、あなたが行動を起こす前に相手の情報を調べておくことを推奨します。これは憶測で判断したり、決めつけたりすることを防ぐための重要なプロセスなのです。
対決ではなく対話を心がける (Choose conversation over confrontation):あなたの仕事やキャリアに支障を及ぼすようであれば、躊躇することなく相手に伝えるようにしましょう。相手を気遣いながら、言葉を慎重に選んで話してください。「問題を解決することが趣旨であって、相手を責めたりすることではない」というメッセージを伝えることが大切です。
事実を相手に提示する (Stick to the facts):具体的な事例を挙げることで、同僚の行動があなたに影響を及ぼしていることを説明するようにしてください。例えば「報告書の提出期限を守ってくれなかったので、取引先からの信頼を失いそうになってしまった」など、冷静に事実を述べるようにしてください。
柔軟な対応を心がける (Be flexible):当初考えていた解決方法にこだわることなく、時や状況に合わせて、相手と一緒に解決方法を模索することを心がけてください。「自分は正しく、相手が間違っている」ことにエネルギーを費やすのは得策ではありません。相手の反発を招き、問題解決を妨げてしまいます。
何度も話し合うこと (Give them a second chance):1度話しただけではうまく行かないこともあります。その場合にはもう一回話す機会を作ってみてください。それでも相手の行動が改善しない場合には、警告として「上司に相談する」ことを、しっかり相手に伝える必要があります。
上司と相談のうえ対応する (Tread carefully with your manager):上司に相談する際には、同僚の場合と同じように、感情的にならずに具体的な事例を挙げて説明をするようにします。ここで上手に問題を解決できれば、あなたの評価もあがるでしょう。ただし適切に対応できなければ、あなたの評価が下がるリスクもゼロではありません。
困った同僚に対して、「やるべきこと」と「やってはいけないこと」
困った同僚にストレスを感じる場合に、「やるべきこと」と「やってはいけないこと」をまとめました。
困った同僚に対して、「やるべきこと」と「やってはいけないこと」
今回は同僚や部下との関係にストレスを感じる際の心構えについて解説をしました。「仕事ができない部下」や「困った同僚」と相手を決めつける前に、彼らの行動をしっかりと観察することが大切です。
表面的な事象で判断することなく、問題行動の背景を調べることも必要になります。実は、あなた自身の振る舞いに問題があり、「仕事ができない部下」や「困った同僚」という周囲からのイメージを作り出している可能性もあるかもしれません。あなた自身がコーチングやアサーションなどのトレーニングを受けることも、今回のような問題の解決には役立つと思います。
参考情報:
Carolyn O’Hara. How to deal with slacker coworker. Harvard Business Review May 14,2014
鈴木英孝◎1993年産業医科大学卒業。米国総合エネルギー企業エクソンモービル社日本法人、アマゾンジャパン合同会社でのグローバルな産業保健活動を経て独立、現在アッシュコンサルティングサービス代表として、クライアント企業に対して産業保健のコンサルティングを提供している。専門は職域の感染症管理、健康経営、化学物質管理、喫煙対策などを含む「産業保健」。