ライフスタイル

2021.12.08 08:00

空室率60%からの起死回生。築43年「上井草グリーンハイツ」の奇跡

上井草グリーンハイツ竣工当時の外観 写真提供:カウエモン(上井草グリーンハイツ)


Z世代が生んだ「適度な尖り」


渡邉の依頼を受け、居室の設計をしたのは技術営業部の武田優之である。武田は2017年に東京理科大学からヤシマ工業に入社、大学在学中は香山壽夫建築研究所に在籍していた。
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渡邉は武田に対し「思いっきりやってください」とだけ伝えた。

Z世代の武田は既存の枠に囚われず、スタンダードな2LDKのタイプの他、掘りごたつ式のリビングを持つ123号室や、階段式の小あがりスペースを持つ203号室といった独創的な部屋を設計していった。

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再生リノベーション前の居室 写真提供:ヤシマ工業
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再生リノベーション後の123号室 写真提供:ヤシマ工業

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再生リノベーション後の203号室 写真提供:ヤシマ工業

適度に尖った武田のアイコニックな居室は耳目を惹き、テレビの取材等を受けるようになった。それは本来の大目的である入居率を上げるためのマーケティング活動の一助にもなった。

何より、居室空間のバリエーションが増えたことで、入居希望者にも変化が現れた。趣味やワークライフバランスを重視する層や、Webデザイナーなどの住空間と執務空間が一体化した層からの問い合わせが来るようになり、居住者のダイバーシティーが拡がっていったのである。

平行して臼井は外観・外装のプランニングを進めていった。リノベーションで重要なことの一つは「まず物件全体のイメージ変える」ことである。エントランスのデザインは上井草の土地に合うように文字のフォント・看板のサインを変更し、オートロックのセキュリティーを付けた。同時に長年住んでいる世帯への配慮も忘れず、バリアフリーの設計も追加していった(上井草グリーンハイツには竣工当初から43年間居住する世帯が3世帯ある)。そして、中庭には「樹木図鑑」も設置した。(後編につづく)

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再生リノベーション前のエントランス外観 写真提供:ヤシマ工業

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再生リノベーション後のエントランス外観 写真提供:阿野太一

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再生リノベーション前のエントランス内部 写真提供:ヤシマ工業

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再生リノベーション後のエントランス内部 写真提供:ヤシマ工業

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樹木図鑑 写真提供:横山徳


渡邉 憲一(わたなべ けんいち)◎カウエモン(上井草グリーンハイツ)代表取締役。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。大学在学中より産経新聞編集局、サンケイスポーツ編集局にて勤務。その後、編集プロダクション、書店、環境調査法人などの勤務を経て、厚生労働省入省。計15年間の勤務のち、家業のマンション管理運営会社代表取締役に就任。

ヤシマ工業
常務取締役 西松 みずき
技術営業部チーフ 臼井 徹
技術営業部 武田 優之

上井草グリーンハイツ インスタグラム:https://www.instagram.com/kamiigusa_green_heights/ 



インタビュアー:曽根 康司(そね こうじ)◎キャリアインデックス執行役員、社長室長。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程EMBAプログラム修了(MBA)。原宿と下北沢で時計店を経営したのち、インターネット業界に飛び込む。アマゾンジャパン、ヤフーを経て、現職。「焼肉探究集団ヤキニクエスト」メンバーでもあり、全国数百件の焼肉店を食べ歩いている。

文=曽根康司 編集=石井節子

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