幸せはコントロールできる? 知っておきたい4つの因子とメカニズム

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日本人は実はバラエティに富んだ国民!?


前野氏が幸せの4因子について詳述した著作『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』を上梓したのが2013年。それから7年がたち、世の中全般でWell-Beingやポジティブ心理学に注目が集まり、講演を依頼されたり、企業研修に参加したりすることも多いそうだ。

「話していると、自分は4つの因子をすべて満たすことなんてできないとおっしゃる方が結構います。そんなこと言わずになんとかなりますからやってみましょうと言うと、前野先生だからできるんです、自分には自信がないと。そういう風に自己肯定感が低い人が日本人には多いような気がします。

日本人には心配性遺伝子というものがあって、心配しがちな国民だということが知られています。でも、心配性だからこそ細部にこだわって自動車産業が発展したり、きめ細やかなおもてなしができると世界から評価されたりしています。つまり、心配性であること自体は決して悪いことではないんですが、幸福になるために自己肯定感は高いほうがいいと言えるでしょう」



「おもてなし」もそうだが、震災の時にきちんと整列して何かを待つ日本人に海外から称賛の声が上がったことがある。一方で昨今の新型コロナウイルスの流行でマスクやトイレットペーパーの取り合いをする光景を目にすると、違和感を覚えることも事実だ。

「たしかに日本人の中には、整列して並ぶ人もいれば、我先にと列を乱す人もいます。自己肯定感、楽観性に関しても低い人から高い人までいろいろいて、そういう意味では多様性があると言えるでしょう。これに対し、いろいろな人がいることを良しとせず、生産性を上げるために国民を均質にしようとしてきた歴史的な経緯があります。そうすると効率化ができたとしても、幸福度はどうしても低くなってしまいます」

幸せの因子の2番目「ありがとう」因子からは、幸福度と交友関係に深い関連があることがわかるが、友達が多いことよりも、たとえ数は少なくとも多様な友達がいる方が幸せな傾向があるのだという。

「友達が多様だから幸せになるのか、幸せな人が多様な友達を作ったり、多様な人を受け入れる寛容性をもっていたりする傾向にあるのか、どちらが原因でどちらが結果なのかはわかりませんが、統計的にわかっているのは友達が多様な人は幸せな人が多いということです。だから、仕事のつながりだけとか、地域のつながりだけではなく、多様な他者と親密になることが幸せの第一歩と言えるでしょう」


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多様な人とつながることが、幸せな社会を作ることに


昨今の日本では、電車に乗ると、座席一列みんなが俯いてスマホに向かい、他者とのコミュにケーションを拒絶しているように見えることがある。そんな日本人が他者との「つながり」を身に着け、幸せになるのは難しそうにも思える。

「僕は、いくつかの街作りに関するプロジェクトにもかかわっています。総合計画の中に『市民みんなが幸せな街作り』を掲げているケースで、どんな街が幸せと考えるかというアンケートを取ると、『もっとみんなとつながることのできる街』と答える人が多いんです。つまり、みんな本当は他者とつながりたいと思っているんですよ。普段からつながりが密にある地域の方が、いざというときに助け合うことができますしね」

多種多様な人を受け入れ、つながっていくことがひとりひとりを、ひいては社会全体を幸せにする。まさに最近よく言われるD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)は、こういった草の根のつながりを大事にしていくことによって実現できるものと言える。
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文=定家励子(パラサポWEB) 写真=吉永和久

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