アンドルー・パーカーは2017年に共同で創業したパパ(Papa)のCEOとして、高齢者や低所得世帯の利用者に「パル(相棒)」を派遣し、必要とされる「交友と支援」を提供している。
派遣するパルたちは、利用者の病院への送り迎えをしたり、家事を手伝ったり、PCの使い方を教えたりする。パパについてパーカーは、「私たちはまさに、オンデマンドの家族」だと説明する。新型コロナウイルスのパンデミックが発生して以降は、バーチャル訪問も行っている。
起業のきっかけは、パーカーの祖父だった。あるとき祖父は医者ではなく、医者のところへ連れて行ってくれる誰か、食料品の買い物を手伝ってくれる人を必要としていた。そこでパーカーはフェイスブックに、こう投稿した。
「誰が僕のパパ(祖父)のパルになってくれる人はいない?」──。
SVF2などから1.5億ドルを調達
米フロリダ州マイアミに拠点を置くパパは先ごろ、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2(SVF2)が主導したシリーズDラウンドで、1億5000万ドルを調達したことを発表した。評価額は、14億ドルとなった。
同社がこれまでに調達した金額は、およそ2億4000万ドル。ベンチャーキャピタルのTCG、タイガー・グローバル・マネジメント、カナンをはじめとする投資家たちが同社に対して示す関心は、「健康」が病院だけに関わるものではないことへの認識の高まりを物語っている。
米政府も2019年、生活支援サービスにかかる費用を(高齢者・障害者向けの)公的医療保険制度メディケアの対象とすることを決定した。そして、パパは現在、合わせて65を超える健康保険と契約。「パパ・パル」と呼ぶスタッフを、利用者の自宅に派遣している。
パルの役割には、利用者との信頼関係を通じて、提供するサービスとニーズの「ずれ」を特定することも含まれる。「床にゆがみがある」「バスタブの縁が高すぎて高齢者には危険」など、利用者にとっての問題点を指摘。保険を利用したリフォームなどを提案する。こうした「ずれ」の特定により、利用者の生活の質の向上を目指している。
また、パパはAIを利用することで、利用者のニーズに優先順位を付け、サービスに反映させている。パーカーは、「すべての問題を解決できるわけではない。だが、多くの問題を特定することは可能だ」と語る。