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2021.11.06

情報だけでは不十分。女性の医療を再定義する「Tia」の躍進

「ティア」共同創業者のフェリシティ・ヨスト(左)とキャロリン・ウィッティ(右) 写真=TIA

米国では、女性のうちおよそ10人に1人が多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:排卵障害の一種)を患っている。にもかかわらず、キャロリン・ウィッティ(Carolyn Witte)は、医師からそう診断されるまでに3年以上を要した。おまけに、その後もこの病気について、自分であれこれ調べなくてはならなかった。

PCOSは、ときにホルモンバランスや代謝の乱れを引き起こし、不妊症や糖尿病、気分障害の原因にもなる。ウィッティは、あちこちの医師を訪ね歩いて情報を探し回り、女性たちが自身の病状や経過を語り合う自助グループの助けを得た末に、ようやく自分の症状をつなぎ合わせて病気の正体を突き止めた。

「システムが寸断されてばらばらだということと、それが女性にどのような悪影響を与えるのかを身をもって知りました」とウィッティは振り返る。

そうした思いをしているのは彼女だけではない。推定によると、PCOSを患う女性のおよそ50%から75%はそれを自覚していないのだ。「女性を中心に据えて形成された医療サービスとはどのようなもので、どう機能するのか、どういった体験ができるのかを考えました。女性の健康を、局所的にではなく全体的にとらえて治療するとはどういうことなのだろうか、と」とウィッティは言う。


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そうして彼女が出した答えが、スタートアップ「ティア(Tia)」だ。4年前に創業されたティアは、対面とオンラインを組み合わせた診療を提供する女性専用クリニック(診療所)を運営している。

現在31歳のウィッティは、大学時代の親友で同い年のフェリシティ・ヨスト(Felicity Yost)と、ティアを共同創業した。2人は2018年に「30 UNDER 30」に選出されている。

「これはシンプルな話です」


ニューヨークを拠点とするティアは2021年9月14日、ローン・パイン・キャピタル主導によるシリーズBラウンドで1億ドルを調達したと発表した。この資金調達についてよく知る人の話によると、ベンチャーキャピタルのThresholdやDefine Ventures、Torch Capitalなどの既存投資家がラウンドに参加し、評価額は6億ドルだった。

フェムテック系スタートアップは、何かと副次的な扱いを受けがちだが、ティアがこうして資金を調達したのは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックでデジタルヘルスブームが広く加速したのを背景に、主流の仲間入りを果たそうと臨戦態勢に入っている兆候だ。ティアはこれまでに、累計で1億3200万ドルを調達している。

ティアを成功に導いたコアとなる原則のひとつは、言うに及ばずだが、女性はヘルスケア分野における最も価値ある顧客であることだ。女性は人口の51%を占めており、男性よりも多く医療サービスを受ける傾向がある。また、貧困層向け医療や、学術ジャーナル「Journal of Health Care For The Poor And Underserved」で発表された研究によると、家族の健康をめぐる決断の80%は女性が下している。

女性が年に1度の健康診断のためにティアのクリニックを訪れるようになると(米医療費負担適正化法のおかげで、どの医療保険も適用される)、それ以後も、少なくともその50%が、メンタルヘルスや婦人科といったほかの予防医療サービスを受けようとして再び足を運ぶようになることが考えられる。「女性のほうが医療サービスを利用するのです」とウィッティは言う。「これはシンプルな話です」
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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