メリーランド州本拠のIonQは、デューク大学の教授であるChris MonroeとJungsang Kimによって2015年に設立された。Monroeは、マサチューセッツ工科大学とコロラド大学ボルダー校で物理学を学び、Kimはスタンフォード大学で物理学の博士号を取得している。
サムスン傘下のVCファンド「サムスン・カタリスト・ファンド」は、IonQが2019年に5500万ドルを調達したラウンドで、アブダビの政府系投資会社「Mubadala」と共同でリードインベスターを務めた。IonQは、アマゾンやGV(旧グーグルベンチャーズ)、NEAからも資金を調達していた。
サムスンは自前主義で知られており、IonQへの出資額は、同社によるスタートアップ投資としては破格の規模だ。サムスン・カタリスト・ファンドは、IonQを「量子コンピュータ業界のリーダー」と紹介している。
「サムスンは、先端半導体などのエレクトロニクス製造における世界的リーダーだ。IonQへの出資は、コンピューティングとデータ処理の分野での革新的な技術を取得し、競争優位性を構築することが目的だ」と調査会社IHS MarkitのRajiv Biswasは話す。
サムスン・カタリスト・ファンドは、IonQに出資した際の声明で次のように述べていた。
「量子コンピュータは、原子よりも微小な領域における物理法則を利用することで、最もパワフルなスーパーコンピュータでも不可能な問題を解くことができる。サムスンは、コアテクノロジーや製造に強みを持ち、半導体やディスプレイ、バッテリーの分野の知見を活かすことで、量子コンピュータ業界の進化を加速させることが可能だと考えている」
調査会社IDCのNyunsoo Naは、サムスンが今後、IonQへの出資を活かし、チップなどの製品をグーグルをはじめとする外部企業に販売すると予測する。サムスンは、世界最大のメモリーチップメーカーだが、2019年に今後10年で1160億ドルを非メモリーチップやチップの受託生産に投資すると発表した。