本記事では、フィンランドに在住し、ベンチャーキャピタル〈Nordic Ninja VC〉としてフィンランドやエストニア、スウェーデンのアーリーステージのスタートアップ企業に投資を行っている宗原智策氏に北欧スタートアップエコシステムについて聞いてみました。
北欧8カ国「baltic 8(バルチック・エイト)」
スタートアップエコシステムの概要
●北欧の最先端としての「顔」
1:世界的に有名なデジタルユニコーン企業を輩出
ーSkype(エストニア)
ーSpotify(スウェーデン)
ーWise(エストニア)
2:一人当たりのユニコーン企業輩出数はシリコンバレー以外で世界最多
3:デジタル・ESG分野における社会変革の最先端をいく
ーDXやMaaSなどのコンセプトの発信源
ー行政のデジタル化やキャッシュレス社会の先端
ー世界幸福度ランキングをはじめ、イノベーション指数、ジェンダーギャップ等のランキングで世界トップクラス
Skypeを始め、世界中で使われているオープンソースのOSであるLinuxや音楽ストリーミングのSpotify、ゲームエンジンのUnity、後払い決済のパイオニアであるKlarnaなどは、この地域発のデジタルイノベーションです。baltic 8では、評価額10億ドル以上の非上場スタートアップを指す「ユニコーン企業」が30社近くあり、これは一人当たりのユニコーン数で、シリコンバレーを除き世界最多の地域です。
Skypeの元従業員がSkypeマフィアと呼ばれる起業家集団やエンジェル投資家となり、これまでこの地域のスタートアップコミュニティーの発展に寄与し、現在はSkypeに続くSpotifyやSupercellなど、その後のユニコーン企業出身者が第2世代として、起業家やエンジェル投資家層を厚くしています。
北欧におけるボーングローバルなスタートアップの作り方
baltic 8と呼ばれる北欧・バルト地域は、8ヵ国合わせても人口が日本の首都圏程度の約3300万人という小国の集まりであり、マーケットが小さく、加えて8ヵ国それぞれで公用語・母国語が異なります。そのため、大多数の人は英語を共通言語とし、企業は、ボーン・グローバル企業(創業初日からグローバルに事業展開を行う企業)になる要因となっています。
成長するために常にグローバル市場での戦いを強いられるため、グローバル・アジェンダに対して敏感であり、自らアジェンダ・セッティングすることもいとわない。グローバルに通ずるイノベーションこそが小国として生き残る術となっています。