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日本人が知らないエストニアのいま

「どこからでも働けるとしたら、どんな環境に身を置きたいですか?」

そう問われたとき、なんと答えるだろう。新型コロナウイルスの影響や災害への不安など、都市部に住んでいる事自体がリスクという見方もできるようになったいま、人々が「働き方」を見直す機運が高まっている。

その代表例が、地方移住だ。2020年5月に内閣官房が発表した調査によると、東京圏在住者の49.8%が「地方暮らし」に関心を持っているという。今月15日、ヤフーが「無制限リモートワーク」を導入したことも話題になった。リモートワークでも働ける人々が増えたいま、都内で働くビジネスパーソンの地方移住は決して非現実的なことではないだろう。

地方移住を少しでも考えているひとへ、朗報がある。北欧の小国・エストニアが移住先の選択肢のひとつになったのだ。

2020年7月、エストニア政府はノマドワーカー・リモートワーカーを対象とした「デジタルノマドビザ」の発給開始を発表した。同ビザは数年前から構想段階にあり、同国のファンにとっては待望の制度だ。

対象となるのは、1. エストニア国外の企業の従業員、2. エストニア国外の企業の経営者、3. エストニア国外の企業に対してサービスを提供するフリーランス・コンサルタントのいずれかに該当する個人であり、条件としては、月収(額面)が3504ユーロ相当(約425000円)であること、そして遠隔からでも勤務できる職種であることが課されている。詳しくは政府公式WEBサイトを参照されたい。

これまでもエストニアのビザ制度として、事業者ビザ、雇用ビザなどはあったが、外国人がエストニア国外の事業を継続しながら移住する場合は、資本金を入れて法人を設立したり、厳しい審査を経てスタートアップ認定される必要(スタートアップビザ)などがあった。

その点、今回発表されたデジタルノマドビザは「ノマドワーカー・リモートワーカー」を明確に対象にしている点に特徴がある。つまり、国内で地方移住してリモートワークをするのと同じように、日本からヨーロッパに移住してエストニアから仕事をすることが可能になるのだ。

20世紀まで、人々は仕事場の近くに住むことが常だった。それが21世紀に入り、デジタルツールが普及するにつれて、「ノマドワーク」「リモートワーク」と称される働き方が注目される。伴って「住処」と「仕事場」の距離が開くことも珍しくなくなった。しかし、それも少数派である。特に海外移住する際は、一部の富裕層を除いてビザの取得が障壁になることが多い。

リモートワークが普及し、住む場所に関する制約が薄れつつある今だからこそ、「自分が理想とする住環境」を国外に求める動きが増えてくることも予想される。今回発給が開始されるデジタルノマドビザは、人々に生き方の選択肢を与え、より多くの人にその機会を提供するきっかけとなるだろう。

文=齋藤アレックス剛太

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