果たして、こうした状況で、チートスのポップコーンをどのように売っていけばいいのか、さまざまな調査を経て、戦略チームの出した答えは次のようなものだった。
チートスは、元々、「単調な毎日に、単調ではない休憩をもたらす遊び心」をブランドの価値としていた。一方でそれは「家族での楽しみ」もメッセージしていたが、そのことが刺さるのはユーザーの半分でしかなく、そのことによって売上が横ばいとなっていた。そこで後の半分のユーザに訴求するため、子供心やいたずら心を取り戻したい大人たちをターゲットに、新製品のポップコーンは狙いを定めた。
どちらかといえば、ネガティブな要素ととらえられがちなチートス・ダスト(チートスの汚れ)にあえてスポットを当て、それに新たに「Cheetle(チートル)」という呼び名を付けて、それは「汚れではない」と主張して、ポジティブな要素への転換を試みたのだ。
クリエイティブ・ジャンプでパワフルに
「#ItsCheetle」というハッシュタグも用意して、SNSでの拡散も仕掛けた。結果、新製品であるポップコーンの売上げは、当初の予定の2倍を記録し、その波及効果で、頭打ち状態だったチートス・ブランド全体の売上げも13%アップしたという。
ここで注目したいのは、調査と論理に基づいた戦略が、一見すると「くだらない表現」を見事に昇華させて成果を上げた点だ。戦略が表現を支え、表現も戦略の単なる解説に陥らず「クリエイティブ・ジャンプ」と呼ばれる発想の跳躍を経て、パワフルになることに成功した。
戦略の肝である子供心やいたずら心からすれば、その表現はこうした「くだらなさ」を持っていてしかるべきなのだが、その場合、往々にして理屈が勝ち過ぎた「説明的」なものになりがちである。または逆に、クリエイターと呼ばれる人達の勘に頼り、「こういう案、くだらないけど面白いでしょう?」と、支える論理もなしにプレゼンされ、あえなく却下されることになる。
成功し評価される広告コミュニケーションは、「納得のいく論理」と「クリエイティブ・ジャンプ」の掛け算があってこそ成立し、ビジネス上の成果につながる。広告業界以外の日々のチャレンジにおいても、「納得のいく論理」と「アイディアのジャンプ」の掛け算は、どこかで意識したいものだ。
連載:先進事例に学ぶ広告コミュニケーションのいま
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