どんなものかというと、新発売されたポップコーンを食べると指に汚れが付いてしまい、何にも触れられなくなるというエピソードが延々と繰り広げられるのだ。
オフィスでチートスのポップコーンを食べている男性に、上司が大量の書類のコピーを手伝ってくれと言ってくるのだが、指が汚れていて手伝えない。また、引っ越しで大きなソファを運んでいる人が手伝ってくれと言うが、チートスのポップコーンを食べている男性は、手が汚れていて手伝えない。
ジムでベンチプレス中に友人が助けを求めても、家族連れで集まっているパーティで赤ちゃんを抱いていてくれと言われても、ガーデンパーティで倒れかかる年配者がいても、すべて「Can’t Touch This(触れられない!)」のだ。全編を通して、MCハマーの1990年の大ヒット曲「U can’t touch this」も流れ、本人もコミカルに出演している。
Cheetos Can’t Touch This, Cannes Lions 2021
ポジティブな要素への転換
このくだらなくも、そこはかとなく笑ってしまうテレビCM「Can’t Touch This」は、世界の広告界&マーケティング界で飛びぬけて大きな影響力を持つカンヌライオンズ2020~2021のクリエイティブ・ストラテジー部門でグランプリを受賞した。
注目すべきは、クリエイティブ・ストラテジー部門という、「ストラテジー(戦略)」を主な対象とする部門での最高評価という点だ。
チートスはアメリカでは大変にポピュラーな製品だが、2019年には成長が止まり、売上は横ばいとなっていた。そこで新たにこのポップコーンを発売することにし、その際の広告コミュニケーションがこの「Can’t Touch This」というテレビCMた。
ポップコーン市場にはすでに既存の人気商品が存在していて、それらの競合商品は、どこででも比較的きれいに食べられるスナックという訴求を消費者にしていた。
ところが、チートスには、製品の特徴として「チートス・ダスト」と呼ばれるオレンジ色の粉が付着していて(実はそれがとてもおいしい)、食べるときにはそれで手指が汚れてしまう。チートスが発売する新製品のポップコーンも例外ではなかった。