それどころか、データの示すところによれば、2021年現在までの時点で、オンラインのサードパーティ・マーケットプレイスの流通取引総額(GMV)は、前年比で81%も増加している。
オンラインマーケットプレイスへの移行は、なぜ進んでいるのだろうか? 2020年の大部分を通じて、対面での買い物はおこないにくかった。そうした状況のなかで、オンラインマーケットプレイスは、商品発見や配送の新たな手段を求める消費者にとって価値あるものになった。
オンラインマーケットプレイスによって消費者とのタッチポイント(接点)が増えることは、ターゲットとなるオーディエンスを引き寄せるための方法が、またひとつ増えることを意味する。結果として、高級品分野のブランドも、オンラインマーケットプレイスへの進出に乗り出している。
実際、ベイン・アンド・カンパニーの予測によれば、2025年までに、個人向け高級品全体の最大3分の1がオンラインで購入されるようになり、その売上は推定1360億ドルに達するという。
たとえば、「イタリスト(italist)」などの高級品オンラインマーケットプレイスは、そうした消費行動の変化から利益を得ようとしている。
250を超える独立系ブティックの商品を集めるイタリストでは、オンラインの買い物客が、家にいながらにしてミラノやフィレンツェ、ローマのブティックで高級品を購入できるようにしている。価格はイタリアでの小売価格で、世界平均より40%安くなるケースもある。
イタリストのディエゴ・アバ(Diego Abba)最高経営責任者(CEO)は、こう話している。「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、高級品分野に深刻な影響を及ぼしている。とりわけ大きな影響を受けたのが、対面での買い物と、イタリアのような、高級品ショッピングを目的とした旅行先だ。当社はすでに、そうした旅先での体験をバーチャル空間に変換する取り組みを始めていたため、パンデミックは当社のミッションを際立たせるものでしかなかった」
「ファーフェッチ」などのその他の高級品マーケットプレイスも、順調に成長している。190の国と地域でサービスを展開するファーフェッチは、2021年第1四半期に618ドルという目覚ましい平均注文金額を達成した。デジタルプラットフォームのGMVも、前年比60%増の成長を見せた。
さらに、高級衣料品マーケットプレイスの「ネッタポルテ(Net-A-Porter)」と「マッチズ・ファッション(Matches Fashion)」は、高級ブランドがオムニチャネル小売に進出しようとする際の、戦略的で収益の見込める手段になることを証明しつつある。