バーテンダーは、レバーを手で動かす代わりに、タッチスクリーンを操作する。ビールの種類、量をタッチすると、自動的にビールが注がれる。しかも、理想的な温度、最適な泡の割合で提供されるのだ。
パビーノ共同創立者兼CEO、ジャン・アルギュル氏にはかねてから、トルコのバーで生ビールの品質が一定していないことに不満があった。ある場所で美味しいと思ったビールなのに、別の場所で飲むと、ぬるく、泡も今ひとつで後味も金属のようだったりする。彼は「注がれたビールに革命を起こそう」と決意した。
クラウド接続で量・泡管理。温度、ガス圧、pHも監視
スマートタップのしくみはこうだ。数分でインストールが完了すると、電子音が鳴ってパビーノのクラウドと接続される。ビールの品質を左右するパラメーターの情報を1カ所に集約、特許取得済みのロボティックスが注ぐ量を管理し、ビールの種類に応じて最適な泡を作る。しかも、泡のタイプや注ぐスピードをスマートタップで選択することも可能だ。
パビーノのアプリ 写真提供:パビーノ
「後から気付いたことですが、僕らのテクノロジーは、ロボット工学、IoT、人工知能を集約させたものなんですね。ですから私たちは『ビールインターネット』と呼んでいます」とアルギュル氏は笑う。
写真提供:パビーノ
「モニタリングシステムでは、温度、ガス圧、注入量だけでなくpHも監視しており、ディスプレイにすべてが表示されます。例えば、温度、ガス圧に何か異常があるときやビール樽が空になった場合などには、警告メッセージも表示されます」
さらにパビーノはなんと売上げとビールの品質データを収集し、サマリーを提供する。これは、店のオーナーやビール醸造所だけでなく、サービス技術者やメンテナンス担当者にも喜ばれるだろう。「不良が生じた場合、問題となっている所を簡単に特定でき、素早く解決できます」とアルギュル氏は続ける。
モニタリングシステムで、異常もすぐに察知できる。写真提供:パビーノ
廃棄率23パーセントの「ビールロス」、実質ゼロに?
当初は完璧な生ビールを目標としていたアルギュル氏だが、近年はほかの重要な観点にも注目しはじめている。ビールのロスだ。「アメリカレストラン経営者協会(American Restaurateurs Association)によると、ビールを注ぐ際に生じるロスは、樽ひとつ当たり平均で23%だそうです。つまり、店が大金を失っていることになります。スマートタップを適切に使えば、ロスは実質ゼロまで低下するはずです」。
バーのオーナーにとっては、モニタリングシステムでオペレーションもスムーズになるばかりか、大きな節約につながるという算段だ。
「僕らはバーテンダーの仕事を楽にしたいと思っているんです。タップごとに機能するモードを選択できますし、手動でどんなバリエーションでも選択できます」とアルギュル氏は話す。
スマートタップを使えば、実質ゼロになるまでロスを減らせる。写真提供:パビーノ