ユーザーに不満を投稿してもらい、AI(人口知能)で解析してマーケティングに活かすというサービスはなぜ誕生したのか、他のユーザー口コミ分析との違いは何なのか。
「不満買取センター」設立の背景
2012年、「不満買取センター」が設立され、投稿された不満をレポートとしてまとめる活動が始まる。その後の2017年、不満買取センターは「インサイトテック」に社名を変更。自然言語処理研究で知られる京都大学黒橋・河原研究室との産学連携体制を取って、AIによる文章解析技術「ITAS(アイタス)」で不満を分析。会員数の多さや特許を取得するほどの解析の精度の高さで多くの企業から信頼を集めている。
ここでインサイトテック社がAIによる文章解析を始めた2017年頃の日本のAI普及状況を見てみよう。
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身近な事例でいうと、2016年にソフトバンクショップで家庭向け人型ロボット「Pepper」の販売受付が始まる。2017年にはグーグルとLINEがスマートスピーカーの販売を開始し、アマゾンも「Amazon Echo」を発表。AIが一般普及するそういった波に乗って、インサイトテック社はサービスを拡大してきたといえる。
膨大なデータを学習して分類、予測を行うAI技術が進歩を続ける今、インターネット上の音声や文字の情報をAIが解析する精度も上がる一方であることはいうまでもない。産業界でも、決済ツールや販売管理、仕入管理、マーケティングなど、幅広くAIを活用したソリューションが導入されている。
「高価買取キャンペーン」も
現在、会員数56万人を超える「不満買取センター」に、実際に「不満」を投稿するにはどうするか。
まずサイトから会員登録を行う。「不満を売る」というページから15文字以上で不満を入力すると、内容に応じて1〜10ポイントが付与される。1ポイント=1円相当として500ポイントからショッピングギフト券と交換できる仕組みだ。決められたテーマに沿った不満を投稿するとポイントが2倍になる「高価買取キャンペーン」や、サンプルを実際に試して使用感を回答する「サンプル体感キャンペーン」なども行っている。このようなキャンペーンやポイ活(ポイントを貯める活動)ブームによって、会員は順調に増えている。
日常に溜まっているユーザー、顧客の不満を掘り起こすことで、企業は商品やサービスの改良のヒントや潜在的なニーズを知ることができる。また会員は、不満が「査定」された上でポイントに反映されるとあって、きちんと不満を投稿するようになる。このように、会員が増えるに連れて不満の精度は高まっていくのだ。