肉、魚、野菜の3種類で、パッケージにはそれぞれ、「野菜にはスピード洗濯」「肉には合成繊維用のコース」といった表示がある。
開発者はエフタ・ガジット。イスラエルの由緒ある国立美術学校、「ベツァルエル美術デザイン学院」の卒業プロジェクトのために開発したものだ。食べる前にTシャツやジーンズと一緒に洗濯機に放り込むだけで、袋を開ければ、湯気のたつ主菜や副菜が楽しめる。そもそもは「ホームレスの人たちがコインランドリーを『公衆台所』として使い、温かい料理を食べられるように」、が発想の発端だったという。
このプロダクトが発表され、世界で話題になった2017年から4年。その間に襲ったコロナ禍の外食制限で、いまや中食全盛の時代だ。加熱するだけで食べられるミールキットも売れている今、改めて、この発明品の誕生秘話、製品化について、開発者のガジットにメールインタビューした。
──「Sous La Vie」はどんなきっかけで発案し、実装したのか。
ベツァルエル美術デザイン学院(Bezalel Academy of Arts and Design)4年生のとき、リオラ・ロジン(Liora Rosin)教官のもと、フードデザインを学んだ。料理についてまったく無知だったのにこのコースの履修を決めたのはふつうじゃない決断だったけれど、結果的にすごくよかった。
「Sous La Vie」開発者、イスラエルのクリエイター、エフタ・ガジット
このコースでは本格的な料理のコースを履修させられた。真空調理について学んだのもここでだ。
最初リオラに、エルサレムから30分ほど離れた森の中にある「ハンター・ギャザラー・ワークショップ(Hunter-Gatherer Workshop、直訳すれば「狩猟採集民の作業場」)」に連れて行かれた。そこでガイドがわれわれに、木の枝や地面からさまざまなものを収穫して見せてくれたんだ。その後、半日、森の中で過ごして、自分たちで収穫したものを使って料理をした。「真空調理」とは正反対の環境で、実に目からうろこの体験だった。
肉、魚、野菜、3種の「Sous La Vie」プロトタイプ
そしてこのコースを修了するにあたって、われわれ学生たちは各々でプロジェクトを立ち上げることになった。
僕は実用とはほど遠いアプローチで、完全に「アート」を追いかけている学生だった。だからこそ、その時は普段と正反対のことがしたくて、ホームレスの人たちが料理する方法を創出することに全力を傾けることにした。そもそも、「ホームレスの人たちが温かい料理を食べられる方法はないか」と思っていたんだ。