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飛行機は高度1万メートルほどの遥か上空を飛ぶため、急病人が出たからといってすぐに病院に担ぎ込むことはできない。そこで登場するのが「機内にお医者様はいらっしゃいますか」という、ドラマなどでおなじみのドクターコールだ。

しかし、医師が搭乗していてどこの座席に座っているのかを客室乗務員たちがあらかじめ情報共有しておくことができれば、より迅速に医療対応をとることが可能となる。そうした意図で、2016年2月にJALが「JAL DOCTOR登録制度」を、同年9月にANAが「ANA Doctor on board」という医師登録制度をスタートさせた。

導入から約5年が経った現在、日本の二大航空会社が施策したこの制度はどのように機能しているのだろうか。

「ドクター登録制度」とはそもそも何か


医師登録制度というのは、各航空会社の利用者である医師に「自分は医師である」とあらかじめ登録しておいてもらう制度だ。これにより、急病人などの発生時に登録医師が搭乗していれば、客室乗務員から協力を依頼することができるのである。

ドクターコールがかかると、機内には一気に緊迫した空気が漂う。登録医師に直接声を掛けることで、医師が名乗り出てくれるのを待つよりも迅速に対応することができるだけでなく、ほかの乗客の心理的な緊張感や不安感の軽減にもつながるのだ。

また、ANAは「日本の医師免許を保有するANAマイレージクラブ会員」であること、JALは「医師資格証を保有するJALマイレージバンク会員」であることを登録条件としている。そのため、緊急時に医師資格の確認など余分な時間を使わずにすむというのも大きい。

ただし、ANAもJALも医師の協力はあくまで任意で、体調不良や飲酒などにより対応をすることが難しい場合には協力依頼を辞退することもできる。登録医師が搭乗していない場合や辞退した場合にはドクターコールを実施するため、「機内にお医者様はいらっしゃいますか」も廃止されてはいない。


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医療対応が必要な案件、機内でどれくらい起きる?


1万メートルほどの高度で飛行をするため、機内は地上とは環境が異なる。調整はされているものの気圧は0.7~0.8気圧で標高2000~2500mの山に登っているのと同じくらい、それに伴って機内の酸素濃度も低下するという。さらに湿度も、外気の湿度がとても低いため長時間の飛行では20%以下まで低下して乾燥する。

加えて、長時間にわたって同じ姿勢で着席していることでいわゆるエコノミークラス症候群が起こることもあり、思わぬ体調不良や急病に見舞われることがあるのだ。

JALにおける機内医療ケースは2019年度で596件起きており、そのうち医師への協力要請を必要としたのは191件だった。2020年度はコロナ禍で乗客数が大きく減ったが、それでも104件の機内医療ケースが起き、うち32件で医師への協力要請を必要としている。

JALだけで年に596件、1日に換算すると約1.6件もの機内医療ケースが生じているのだ。

医師への協力要請を必要としたケースでは、2019年度は191件に対して243人の医師が協力、2020年度は32件のうち18人の医師が協力している。そのうち、「JAL DOCTOR登録制度」に登録している医師は2019年度が11人、2020年度が3人だった。

文=アステル 編集=石井節子

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