大切にしたいのは「誰も排除しないこと」
これほど壮大なプロジェクトの予算について今井に尋ねると「想像できないですよね」と笑う。
「最初、予算は3億円ぐらいかなって思ったんです。だけど今は想像できないほどの金額になっています。でもかまいません。利益云々よりも、やることに対して戻ってくるもの、例えば子どものたち笑顔や彼らの未来の方が、はるかに大きいと思っています」
こうした取り組みは、「企業としてのCSRの一環」として見られがちだが、「CSRというのでは、なんとなく薄っぺらくなってしまう気がして」と言う。
SHIROはエシカルやサステナブルという言葉がここまで普及しない頃から、それらに取り組んできた。「がごめ昆布」や「酒かす」などの廃棄予定だった素材や通常は使えない原料を、製品の原料として生産者から譲り受けるところから始まったブランドで、サステナブルの理念は深く根付いている。
新たなまちづくりというフィールドでは、さらに「誰も排除しないことを大切にしていきたい」と今井は言う。それは、これまでSHIROのビジネスで、ブランドイメージ確立のため多くを削ぎ落としてきた反動かもしれない。
「今回は、行政も市民も民間の意見も、『なるほど』とすべて受け入れて進めようと思っています。もちろん、動物も。鹿やたぬきが施設に来ても排除せず一緒に交われる空間を目指します。ブランドビジネスとは違うその感覚が、今後のSHIROにも活きる気がしています」