コスメティックブランド「SHIRO」創設者の今井浩恵は、2021年6月末で同社の代表取締役社長を退任した。翌7月からは代表取締役会長兼ブランドプロデューサーとして、創業の地である北海道砂川市を活性化するためのまちづくりプロジェクト「みんなのすながわプロジェクト」に注力することを発表した。
創業地で再び「0から1をつくる」
今井は、2000年にシロの前身であるローレルの社長に就任し、2009年に自社ブランド「LAUREL」を設立。2015年にブランド名を「shiro」に変更、2019年に大文字の「SHIRO」表記とし、リブランディングした。
現在はスキンケアやフレグランス、メイクアップ製品など約220アイテムを揃え、洗練されたシンプルなデザインで若い女性だけでなく、年齢を問わず幅広い世代からの支持を集める。国内外に計29店舗を展開し、2021年6月期決算の売上高は133億円だ。
自らの手で立ち上げたブランドは、今年で13年目を迎えた。「おかげさまでSHIROは多くのファンに愛されるブランドに成長し、店舗数や売上も、ある程度のレベルまで到達できたと思っています。これからは『どうやって認知を高めていくのか』という次のステージに来ている。それを創設者がしがみついてやっていくのではなく、『0から1をつくる』ことが得意な私にしかできないことをしたいんです」
そうして、「1を10にするのが得意」という専務取締役の福永敬弘に、社長のバトンを渡した。「私のこれからの10年間は、北海道のまちをつくっていく10年間にしたいと思っています」
「地方なんてそんなものだ」ではなく、行動しよう
SHIROが生まれた砂川市は札幌市と旭川市のほぼ中間に位置し、人口は約1万6000人。旭川市出身の今井は、ローレルへの就職を機に移住し、2019年に東京へ本社移管するまでの約20年間砂川市で生活を送った。
「みんなのすながわプロジェクト」始動にあたり、6月27日に砂川市地域交流センターゆうで開催した地域説明会で、今井は人口減による砂川市の未来について次のように語った。
「2060年には人口が9000人を切るという予測もあります。進学で砂川を出たきり子どもが戻らないのは仕方がない、地方なんてそんなものだ、と諦めるのではなく、些細で小さなことかもしれませんが行動しようと思いました」
6月27日、SHIROは砂川市内で地域説明会を開催した
このプロジェクトは、シロのバックアップのもと「砂川市民の意見を取り入れながら、ものづくり・教育・観光をテーマとした施設や環境を市民と創っていく」ことを掲げている。目玉は、同市内の江陽小学校跡地(約1万8000平米)に建設するシロの新工場と付帯施設だ。
新工場は、市内にすでにある工場を移転増床させる形で、2022年12月の完成を目指す。これにより生産量は月15万個から80万個まで増加を目論む。
付帯施設としては、アスレチックや職業体験など子どもたちが楽しめるコンテンツを計画中で、2023年春頃のオープン予定。雪が降る時期でも思い切り遊べる室内遊具を充実させ、SHIROブランドのショップやカフェも併設するという。
新工場と付帯施設の建設イメージ
シロはかねてから、砂川市で子どもたちにものづくりの面白さを伝える職業体験イベント「すながわジャリボリー」(2010~2019年)を年1回開催していた。新工場建設後は、常設版として製造体験や職業体験の場を展開していく。