そう語るのは、20周年を迎えたアイウエアブランド「JINS」を手掛けるジンズの代表取締役CEO・田中仁。群馬県前橋市に生まれた田中は、1988年にジェイアイエヌ(現・ジンズホールディングス)を創業。2001年にJINSを立ち上げ、メガネ販売本数日本一のブランドへと躍進させた。
2014年、群馬県や前橋市の地域活性化を目的に自らの名前を冠した個人財団を設立すると、出身地でありJINSの創業地でもある前橋市を中心とした「地域貢献」に力を入れるようになった。
「刺激がない」ならつくればいい
田中は、前橋市が抱える課題についてこう語る。
「東京で働く地元の友人に、前橋に戻らない理由を聞くと『刺激がないから』という答えが返ってきます。中でも知的好奇心が旺盛な人たちは、アートや演劇、コンサートを楽しみたいと思ったときに、『地元では体験することができない』となってしまうのです」
そうした“刺激”を地方でも提供できないか。そう考えた田中は、前橋で創業したJINSだからこそできることを、と構想を練った。
そして試行錯誤を重ねること5年以上、2021年4月に新施設「JINS PARK」が完成した。アイウエアの販売に留まらないこの施設は、前橋市に新たな風を吹き込む存在となっている。
4月に前橋市に誕生した「JINS PARK」/ ジンズ提供
世界の起業家の意識の高さに衝撃
田中が「地域貢献」を意識するようになった背景には、世界の起業家との出会いがある。そのきっかけとなったのは、2010年、優れた起業家を表彰する「Ernst&Young ワールド・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー」で大賞を受賞したこと。翌年に日本代表としてモナコ世界大会に出場した。
世界一の企業起業家を決めるこの大会では、評価項目の中に「起業家個人の社会貢献」があった。その内容を見た田中は、衝撃を受けたという。
「大会があったのは東日本大震災が起きた2011年。私も被災地に多少の寄付をしたのですが、世界の起業家たちの寄付への意識やその額を見て、自分の貢献なんて微々たるものだったのだ、と悟りました」