一方の永田副社長はこう話す。「世界では、米・欧・中・印を中心に、すでに、34万回を超える飛行試験が行なわれているが、日本はたったの5回。世界と日本のバイオジェット燃料精製量は2万倍もの差があります。現在インドネシアで大型のミドリムシ培養施設を建設中で、ゆくゆくはコストの安いバイオ燃料が精製できるようになる見通しです」
今年の秋からは、ビジネス機を利用する際に、飛行機をチャーターする側がバイオ燃料を選択できる枠組みも開始すると公約した。
有力企業が並ぶ、燃料開発
国内のバイオ燃料の開発は、どう進んでいるのか?
バイオ燃料分野で民間事業者を支援する、新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)の古川信二氏に取材を行った。
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まず原料となるのは
(1)廃食油、廃獣脂、パーム油等
(2)都市ごみ・廃棄物等
(3)木質バイオマス等
(4)藻類等
の4種類。日本では、三菱パワー、IHI、東洋エンジニリング、電源開発などが、これらの原料を使った燃料開発に挑んでいるという。こうした大企業の有力プレイヤーが並ぶ中、創業わずか16年のベンチャーであるユーグレナが、NEDOから同等に資金提供を受けている。高い期待の表れだ。
NEDOでは、企業を支援するべく、以下のような基本方針を掲げ、2017年から7カ年計画に取り組んでいる。
目的:温室効果ガス排出量削減
目標:2030年の商用化
取り組み:バイオ燃料の国際規格「ASTM D7566」(既存の化石燃料で飛ぶ飛行機を、バイオ燃料でも飛行可能にするための規格)の適合試験合格を支援
古川氏は「これらの基本方針に則る企業へ、開発資金を配分していく」とNEDOの取り組みを説明した。(取材内容以上)
しかし国内のバイオ燃料生産には、課題もある。大きくは、供給量の確保、原料の十分な調達、高い製造コストなど。航空機へ供給する上で、空港での規格作成も必要となる。
こうした課題解決には多くのステークホルダーが存在するため、2020年11月に運輸総合研究所は委員会を設置した。NEDOを含めた関係者(エアライン、石油精製・販売会社、業界団体、空港関係者、有識者、行政)の間では、すでに3度の会合が行われるなど、議論は活発だ。
今回見てきたように、日本と世界の進度は異なる。商用化に向けてこの差を縮小していくためには、ユーグレナを筆頭に日本企業の開発が進むことが必須だ。
北島幸司(きたじまこうじ)◎エアライン勤務歴を活かし、Webメディアや雑誌などで航空や旅に関する記事を執筆する航空ジャーナリスト。YouTubeチャンネル「そらオヤジ組」のほか、ブログ「Avian Wing」も公開中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。
この著者の過去記事
・超音速飛行再び ユナイテッド航空5年後に実現へ (2021年6月28日公開)
・海外事情から見る、可能性を秘めた日本LCCの未来 (2021年6月4日公開)