一方、燃え尽き症候群(バーンアウト)という問題に、研究者兼コーチ兼ライターとしての立場で取り組んでいる筆者から言わせてもらうと、燃え尽き症候群について真っ先に知っておくべきポイントのひとつは、自覚するのは非常に難しいということだ。燃え尽き症候群は、こっそりと忍び寄って来て、少しずつ進行していくからだ。
つらい日が数日続いた程度では、燃え尽き症候群にはならない。また、ストレスとは異なり、燃え尽き症候群になると、何の希望も見えないような気持ちになる。かつての自分は消えてしまい、残っているのは、身体的にも精神的にも燃え尽きたあとの残滓と、自分の抜け殻だけだ。
仕事による「燃え尽き症候群」と「ストレス」には違いがあり、それぞれについて、適切なタイミングで介入する必要がある。そして、その違いを正確に見きわめて備えなければ意味はない。以下では、燃え尽き症候群になったときに表れる一般的な兆候を説明しよう。
1.睡眠時間が減る
燃え尽き症候群の初期に見られる一般的な兆候は、睡眠時間の減少と不眠症だ。実際、米国立睡眠財団によれば、睡眠時間が頻繁に6時間を切るようになるのが、燃え尽き症候群の最もわかりやすい兆候のひとつだという。そうした初期の兆候が進行し、やがてはチャンスや人、仕事に対して「ノー」と言わないことが習慣になっていく。
2.状況に圧倒される
ToDoリストに並んだタスクをいくら片づけても終わりが見えず、合間にひと息ついたり、気分転換したりする暇もなく、孤立無援だという気持ちがぬぐえないなら、あなたは圧倒されているのかもしれない。
筆者は、2021年6月はじめに書いた記事で、職場で自らのニーズや権利を主張し擁護する重要性を説いた。パンデミック期間中には、仕事量の多さに圧倒される人が大幅に増加している。
3.疎外感がある
燃え尽き症候群の人はしばしば、精神的あるいは身体的に孤立している。筆者が最近、コーチングを担当していた米東部の名門大学法学部卒の女性は、居場所がないのは「実力がない」せいだと自分を責めていた。根拠のない思い込みで苦しむのはよくあることだが、心痛むことだ。こうした疎外感は、ストレスと燃え尽き症候群を分ける顕著な特徴だ。