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ニュースから見る“保険”の風

Halfpoint Images/Getty Images

6月7日、アメリカ食品医薬品局(FDA)がアルツハイマー病の治療薬「アデュカヌマブ」を承認したと報じられた。この薬を共同開発したのは、日本の大手製薬会社のエーザイと米国のバイオ医薬品メーカーのバイオジェンだ。

アルツハイマー病は、高齢者における「認知症」の67.6%を占める。原因物質(アミロイドベータ)が脳内に蓄積することで、神経細胞(ニューロン)が徐々に能力を失う、不可逆的で進行性の疾患だ。現状では有効な治療法がなく、確実な予防法も見つかっていないとされていた。

それが、この新薬を、認知症の一歩手前と言われるMCI(Mild Cognitive Impairment=軽度認知障害)または軽度認知症の段階で投与すれば、原因物質に直接作用して減少させることができるという。エーザイは、厚生労働省に2020年12月10日の時点で新薬承認の申請をしており、通常の医薬品では審査期間が1年程度であることを考慮すれば、日本でも早ければ年内に結論が出るのではとの声もある。

MCIというのは、本人や家族から一部の認知機能の低下の訴えはあるものの、日常生活への影響はほとんどなく、認知症とは診断できない状態のことだ。

海馬や大脳全体にやや萎縮が出現しているものの、アルツハイマー型認知症の疑いにまでは至らないような段階が、MCIのイメージに近いかもしれない。

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出典:厚生労働省「第115回社会保障審査会介護給付費分科会資料」認知症の施策現状についてより筆者作成

MCIと認知症の決定的な違いは、かなり大ざっぱに言えば、正常に回復する可能性が有るか無いかと言えそうだ。重い認知症と診断されれば回復の見込みはまず無いが、MCIであれば正常なレベルに回復する人もいる。

日本神経学会の「認知症疾患診断ガイドライン2017」によると、年間16~41%がMCIから正常レベルに回復する。一方で、年間5~15%がMCIから認知症に進むという。

つまり、認知症への進行を防ぐなら、いかにMCIの段階で対策を講じられるかが重要となる。認知症は、その兆しが出てきたときに本人も家族も「否認」することで手遅れになりやすい病だ。異変に気付いてMCIの段階で早期に適切なケアをするかどうかが、今後は大きな分かれ道になるかもしれない。

給付金でMCIと向き合う


「MCI」という言葉は、多くの人にとってはまだ聞き慣れない言葉のようだ。自分がなぜ知っていたのか考えてみると、MCIでお金がもらえる保険商品があることに思い至った。

ここ数年、人気を博している保険に「認知症保険」がある。その名のとおり、認知症になったら保険金が受け取れる商品だが、その保障のなかに、MCIの段階で給付金が受け取れるプランがあるのだ。

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出典:各社ホームページより筆者作成

認知症になったときに受け取れる基本保険金額から、一定割合の給付金をMCI診断確定時に受け取れる仕組みが主流で、治療の「軍資金」に使えそうだ。

いま認知症保険に入っている人は、将来、自分が認知症になったとき、家族に迷惑をかけないために契約している人が多いようだ。認知症保険により保険金を受け取るときには、認知判断能力が低下していて、自分では保険金請求ができない状態になっている可能性もある。そのため、認知症保険の申し込みにあたっては、認知症夫婦による老老介護もある実態を踏まえて、保険金受取人として子供世代を指定するように求められるのが一般的だ。

MCI保障付きの保険であれば、兆候が出てきたときに診断を受けることで、自分で認知症保険に給付金を請求し、受け取ったお金を治療費の元手にして、認知症への進行を回避できるかもしれない。

連載:ニュースから見る“保険”の風
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文・図=竹下さくら

エーザイ認知症
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