すでにエレン・マッカーサー財団のCirculytics、WBSCD(持続可能な発展のための世界経済人会議)のCTI(Circular Transition Indicator)、Circle Economy のCircle City Scan Tool、ルクセンブルク政府主導のPCDS(Product Circulality Data Sheet)などの測定ツールが開発されていますが、まだ多くの課題があり、今後データ蓄積による測定の精緻化と幅広い指標の開発が進んでいくでしょう。また、日本でも、サーキュラー・エコノミー及びプラスチック資源循環分野に係るファイナンス(ガイダンス)策定が予定され、情報開示や対話が促される環境が整備されていく方向にあります。
現状、CO2排出量などの明確な指標を示しにくいサーキュラーエコノミーの概念が、資源循環度等の数値化や投資基準を明確にすることで、さらなる普及につながるでしょう。
5. 自治体が進める「Design out waste」
これまで自治体は廃棄物管理政策を推し進めてきましたが、さまざまな制約条件から、年々改善のハードルが上がっている状態にある自治体は少なくありません。従来の廃棄物管理や規制に加えて、そもそも廃棄物が出ないような循環型の仕組みを設計することが求められています。
今後は、例えば、近郊農業や域内の再生材活用によるショートサプライチェーンの構築、民間事業者とのタイアップを通じた再生型商品設計へのアプローチ、高度なデジタル技術を通じたリサイクルスキームの開発など、3Rから一歩前進した取り組みが進んでいくでしょう。
国内の例を挙げると、京都府京都市では食品の販売期限の延長を事業者と取り組むことやプラスチックに「京もの」を掛け合わせてプラ削減、東京都ではリユース容器を利用した商品提供プラットフォーム「Loop」と共同の取り組み、徳島県上勝町では花王株式会社と詰め替え容器のリサイクルを、それぞれ製品や仕組みの「設計」に多方面のステークホルダーとともに切り込んで、新しい取り組みを始めています。他にも数々の取り組みが始まっています。キーワードは、「『Design from waste(廃棄物から設計する)』から『Design out waste(廃棄部をあらかじめ出ないように設計する)』に移行する」です。
そして、日本政府は2050年の温室効果ガス排出実質ゼロ目標に向けて、2030年までにモデル地域で脱炭素化に集中的に取り組む自治体が次々に他自治体に波及していく「脱炭素ドミノ」という用語を、「地域脱炭素ロードマップ」の素案のなかで使いました。
地域の事情に即したサーキュラーエコノミーをめぐる課題に取り組み、「サーキュラーエコノミードミノ」を起こしていくことも移行に向けた鍵になります。その点においても、自治体とサーキュラーエコノミーというテーマが注目されるでしょう。
【参照レポート】CREATING A SUSTAINABLE FOOD FUTURE
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(この記事は、2021年1月にリリースされたCircular Economy Hubの記事から転載したものです)
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