ただ、サーキュラーエコノミーを具現化するビジネスモデルといえども、すべてをPaaSモデルに移行すればいいかというと一概にそうともいえません。PaaSにおいては、個人の価値観や経済状況・社会の文化的背景などが複雑に絡み合っています。一般的に、PaaSに適した製品は、愛着を持ちにくい製品や衛生面に不安を感じないもの、高額な商品だといわれています。これらの親和性のある製品群にはPaaSモデル導入の検討をするに値するかもしれません。
一方で、これらの条件に関わらず、価格を上回る価値を提供できればこの限りではありません。例えば、15万円の洗濯機をそのまま月額1000円などにするサブスクリプションモデルに加え、顧客から集めたデータを使って最適な洗濯方法を提示するアプリや、洗濯機の定期クリーニングなどのサービスが付帯されていればどうでしょうか。そして、その洗濯機はマイクロプラスチックが排出されず、さらに100%再生資源で作られ、返却後も循環するスキームと技術があれば、消費者や投資家の高まる環境配慮要請に対応する価値が提供できるでしょう。
2021年は、PaaSモデルがサーキュラーエコノミーの観点と結びつくことと、従来の概念を打ち破る付加価値を持った仕組み・サービスづくりが模索されるのではないかと考えています。
4. 循環度(サーキュラリティ)の定量的評価
サーキュラーエコノミーをメインストリーム化させ、実践レベルで活用するには、定量的な評価が欠かせません。その定量的評価として、循環度(サーキュラリティ)測定ツールの開発が急ピッチで進められています。
下記は、循環度測定をするいくつかのメリットです。
・数値化による現在の立ち位置の明確化
・今後の進む方向性の提示
・経年変化を確認し改善点を提示
・組織内部、特にトップマネジメント層への訴求
・人事考課の一部に統合することが可能
・(公開をすれば)外部への透明性を確保
・投資家に対する明確な指標となる可能性
・環境影響全体を評価できる
特に最後の点(「環境影響全体を評価できる」)は重要です。例えば、リサイクルに多大なエネルギーを要している場合、再生可能な天然資源を使ったほうが実は循環度は高いかもしれません。新しい製品を循環型でつくるよりも、既存製品の現存価値を最大化するビジネスモデルのほうが実は循環度が高いかもしれません。PaaSモデルの導入によって、物流や容器包装の増加に伴うCO2排出量が実は大きく増える可能性があるかもしれません。
消費者や生産者にこのような事実を気づかせてくれるのが循環度測定です。