スタイルのイメージを決定付けるリトラクタブル・ハードトップモデルは、元来、デザインを成立させるのが難しく、オープン状態のボディラインを重視すればクローズド時のデザインが破綻をきたすことが多く、逆もまたしかりであった。しかしこのポルトフィーノMは、オープンにしてもクローズドでも、プロポーションの完成度、ディテールの充実度が圧倒的に高く、そのボディラインの豊穣さに驚かされる。
この10年はフェラーリにとってテクノロジーの発展期でもあった。ACC(アクティブ・クルーズ・コントロール)を含む先進運転支援システムや、ベンチレーション機能が搭載されたシート、従来の7速仕様からさらに高効率化された8速ギアボックスなど、乗員の快適性や安全性を高めるさまざまな技術が現代的なフォーマットに落とし込まれ、このポルトフィーノMには採用されている。
ハイテク装備満載のインテリアは、ワイド且つ重層的にまとめられている。ステアリングはエンジンON/OFFスイッチをはじめ各種スイッチ類が充実したF1マシンのような面持ちで、コックピットに座ったドライバーの気持ちを高めてくれる。ただ一方で、疲れた時にはルーフさえ閉めれば、これ以上ないほどのクワイエットな空間が広がる。ここもリトラクタブル・ハードトップモデルならではの恩恵といえよう。