観光客9割減の高山祭で考えた サステナブルツーリズムの未来

今年は屋台の曳き揃えやからくり奉納、夜祭りは中止に。屋台蔵での公開のみとなった


今年の祭りの2日間の人出は1万9000人。2年前の18万2000人からは9割減だったという。1万9000人が、多いのか、少ないのか。18万2千人が、多すぎなのか、適切なのか。数字だけ聞くと、どちらが正解なのかよくわからなくなる。

サステナブルツーリズムの提唱


いま、観光の世界では、アフターコロナの新しい観光の在り方としての「サステナブルツーリズム=持続可能な観光」が、めざすべき姿として盛んに論じられ始めている。

そもそも、2009年に岐阜県庁の観光推進局長となったときから、私は地域での持続可能な観光地づくりを推進してきたと自負している。コロナ禍があろうとなかろうと、地域資源を活かした持続可能な観光地の在り方こそが、今後の地方の観光の生きる道であると信じてきた。

翻って、高山祭は、果たしてサステナブルツーリズムであったと言えるのだろうか? 2日間で20万人近い人が集まるなかで、神事がいかに行われてきたかや、地域還元型の祭りがどう行われてきたかについては、今年の静かな祭りのなかで、地元の人も、感じたものがきっとあるはずだ。

観光産業と地域の持続可能性との両立をめざす、新しい「祭り」や「観光地」のありかについて、この地の心ある人たちが、いつか正解を見いだしてくれると願いたい。

同時に、そこを訪れる私たちも、もう一度、地域の伝統的な祭りや行事などに参画するときのマナーや、お金の落とし方など、さまざまな「観光」の在り方について、真剣に考え直すときに来ているのではないだろうか。

日本が、真の観光立国としてのサステナブルツーリズムの実践国となるためには、地域での観光のあり方について、提供者としても、訪問者としても、再度見直し、制度として再構築しなければならないものが多々あるはずだ。

次回からこのコラムでは、「サステナブルツーリズムへの歩み 岐阜から発信する未来の観光」をテーマに書いていきたい。

連載:Enjoy the GAP! -日本を世界に伝える旅
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文・写真=古田菜穂子

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