1つ目は、いわゆる「老後2000万円問題」だ。2019年6月に金融庁が発表した「高齢社会における資産形成・管理」という報告書の中で、(夫65歳、妻60歳から年金生活を送るとしたモデルケースで、30年後まで生きると想定すると)老後資金が約2000万円不足するという試算が示されたことで、国民的議論に発展した。
事実、証券会社に勤める知人たちに聞くと、この問題が報じられるようになってから、新規の口座開設数が急増したと皆が口を揃えて言う。自分で投資をして老後資産の一部をつくりなさいと言われても、日本では投資について学ぶ機会が与えられていないことから、そのような機会が全員に与えられるべきだと考える人が増えたのだろう。
2つ目は、2022年度から始まる高校の新学習指導要領において、家庭科の授業で「資産形成」の視点に触れるよう示されたことだ。このことで、ついに日本でも金融教育を受ける機会ができるのかと前向きにとらえる声も多い。
筆者自身も大きな一歩であるとは思うが、かなりしっかりとしたカリキュラムを組まないと、教える側が苦労するだろう。
以前、金融庁主催のイベントで、都内の家庭科の先生たちに金融教育の入門編のような講演をしたことがあるが、講演後に先生たちと話をしてみたところ、やはり何をどのように教えればよいのかを悩んでいる人が多かったのが、強く印象に残っている。
「うんこドリル」とも連携。官民で推進
このような世の中の動きのなかで、今年に入ってから官民両面から金融教育がさらに推進されている場面を多く見る。
たとえば、金融庁は、3月に文響社の「うんこドリル」と連携し、インターネット上でお金について学べる小学生向けコンテンツ「うんこお金ドリル」を公開した。
うんこドリルは、子どもたちから非常に強い支持を得ている強力なコンテンツで、小学生向けの国語や算数、英語のドリルや未就学児向けのシリーズなど、累計で820万部を発行している。金融教育と聞くと難しそうで気が進まないというのは大人も子どもも同じだと思うが、人気コンテンツとコラボレーションすることで入り口のハードルを下げたのは、とてもいいことだと思う。