また、民間企業も金融教育を推進し始めている。auじぶん銀行は、臼井朋貴社長が、3月8日に大阪府の東大阪市立英田南小学校で「お金の授業」という特別授業をオンラインで実施した。同行は子どもたちに向けた金融教育コンテンツとして、「auじぶん銀行劇場 金融昔ばなし」という動画教材もウェブ上に公開している。
クレディセゾンも、2019年12月から、中高生向けの金融教育プログラム「出張授業~SAISON TEACHER~」をスタートさせており、これまでに全国の中学校や高等学校で累計90回行われ、約4000名の生徒が学んでいる。
このように官民が揃って推進の流れに乗っているという事実は歓迎すべきことだが、これを機会に、あらためて金融教育の定義を考えたほうがいいだろう。仮に誤ったかたちで金融教育の流れが本格化してしまったら、非常に残念な結果になりかねないからだ。
都道府県金融広報委員会、政府、日本銀行、地方公共団体、民間団体等と協力して、中立・公正な立場から、暮らしに身近な金融に関する幅広い広報活動を行っている金融広報中央委員は、金融教育について以下のように定義している。
金融教育は、お金や金融のさまざまな働きを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて、主体的に行動できる態度を養う教育である。
具体的な表現がないのでいまいち理解しにくいかもしれないが、金融教育とは、お金を軸に非常に幅広い内容を学んでいくことを指しているということはわかるだろう。しかし、ここ数年で目にする金融教育は、どれも「投資」に偏っている印象を受ける。
前述の高校の新学習指導要領での家庭科における金融教育もそうだ。何もしないよりはいいのだが、これでは金融教育といっても資産形成、つまりは投資に触れることが金融教育とされている。
当然、金融教育のなかに投資が含まれることには一切の異論はない。しかし、それ以外にも、経済や株式会社の仕組み、簿記などの企業会計、税務などの基礎知識も教えるべきであり、さらに言えば、家計に即した節約や貯蓄、詐欺から身を守る方法なども重要となるだろう。